弱形と縮約5 縮約形を覚える



典型的な縮約形として、Not at all.を考えます。とりあえず意味のことは脇においておきましょう。これは日本英語だとノット・アット・オールですが、英語では「絶対」そういう発音になりません。日本語に近い音だと「ナラロー」でしょうか。子音と母音がすべてくっつきnotatallとなり、このままだと「ナタトール」ですが、英語の話し言葉ではしばしばtはrに替わります。そして語尾のlは日本語のオに似た音になります。よくbeautifulをビューティホーといいますが、その現象と同じです。こうした音結合と音変化の結果、ナラローとなるわけです。何度も聞いているうちに慣れてきますから、「慣れろー」と覚えてもさしつかえありません。

昔、アメリカに渡った日本人一世は英語など習っていませんから、現地での生活の中で耳から聞いたままをしゃべっていました。今はバスの停車を運転手に伝えるのにボタンを押しますが、昔は「降りるよ」と口頭で伝えていました。それがI’ll get off.なのですが、当然、アイル・ゲット・オフではなく「アゲドーフ」と言えば止まってくれることを「経験的に」覚えて、仲間内に伝えていきました。これがいわゆる日本訛の英語ということになります。一世さんたちの苦労が偲ばれますが、こういう訛のある英単語を並べて会話する文体をピジン(混淆語)といいます。ピジンは無論、話し言葉だけで、書き言葉にはなりません。標準英語はあくまでも書き言葉です。実は英語でも話し言葉には種類が多く、地域や民族などで相当な違いがあります。渡米してレストランやお店に入ると、さっぱり英語がわからないというのはこの変種のせいです。

時には相手も日本英語がわからないので、お互いに困る、通じないという現象が起こります。その時、学校であんなに英語を勉強したのに、という恨みが生じます。実は習ったのは書き言葉だけで、話し言葉はほとんど習っていません。まして黒人英語やヒスパニック英語など習いようがありません。

縮約や音変化による変種は単語のような感じで覚えていくのが早道です。実は普通の英会話に必要なパターンというのはそれほど多くありません。事前に知っておくと現地に行けばアッと言う間に習得できます。この手の紹介本はたくさん出ていますから、ぜひ音型と一緒に練習してみてください。

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