日本語の音韻のアルファベット表記 1


ヘボン式

日本語の音韻、つまり五十音をカタカナでなくアルファベットで書いてみると、おもしろいことがわかります。いわゆるローマ字表記ですが、ローマ字には2種類あり、ヘボン式と訓令式があります。ヘボン式というのは幕末の日本にやってきたアメリカ人宣教師が和英辞典を作ったことに始まります。ヘボンというのは日本人がヘボン先生と呼んだことによりますが、正式名はHepburnです。オードリー・ヘップバーンと同じ苗字です。ヘボン先生は英語の感覚で日本語を表記しているので、子音と母音を分離して書いていますから、モーラ対応であるカタカナとは違う感覚で日本語の音韻を分析していることになり、音声学的には興味深いです。ヘボン式は今でも英語式ということで日本で広く使われています。

ヘボン式表記では文字が1つの音、2つの音、3つの音があります。1つのものはアイウエオだけであり、母音であることがわかります。カ行はa,i,u,e,oにkを付けたものなので、子音1と母音の組み合わせであることを示しています。つまり2文字で表記されています。サ行はsa,shi,su,se,soとシだけ3文字という不規則な配置になっています。タ行はta,chi,tsu,te,toと3文字があるだけでなく、綴りも違っています。これは何かありそうですね。ナ行は2文字で規則的、ハ行はha,hi,fu,he,hoとなっていて2文字は同じですが、フだけ子音字が違います。マ行は規則的です。ヤ行はya,yu,yoと2文字と規則的ですが、あるべきyi,yeがありません。ラ行は規則的2文字、ワ行はwaのみという特殊な行になっています。まずこの謎を解いておきましょう。

Shiとchiは英文字に対応する子音字がないということです。日本語にはsiという音がありません。それで英語の時間に困るわけで、seaとsheの区別が困難なのです。ヘボン先生の耳には日本語のシはsheの子音に聞こえたわけで、実際、国際音声記号でもsheに相当する子音の記号が与えられています。つまり日本語の音韻としてはサ行として規則的配列なのですが、音声学的にはサ行は変則的配列になっている、ということです。タ行についても同様で、tiとchiの違いがtickとchickの違いが日本人には難しいのです。しかし英語教育のおかげで今の日本人はtiの音が発音できるようになりました。それでチケット、ティケットが併用されているわけです。

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