直訳と意訳の選択
最近はインターネットの翻訳やAIによる翻訳が盛んになってきました。機械翻訳には種類があり、対象言語と目標言語の形態素解析をして、形態素辞書により語の交換を行って、文法辞書により構文を変換する、という、従来の英語翻訳の手法を機械でシミュレーションする方法と、過去の翻訳例を集積して、語彙や構文が似ているものを選び出す方法があります。現在、流行っている機械翻訳は後者の方法です。この方法の利点は翻訳文が読みやすくできていることと、素早くできることです。
前者の方法は時間がかかるだけでなく、出来上がった翻訳文は直訳的で、学校英語のような生硬な文章になってしまいます。それでも語彙変換の段階で誤変換があり、翻訳文は文脈的にありえない奇妙なものになることがあります。
翻訳を求める人々は原文を読まないので、結果的に時間が短く、読みやすいネット翻訳やAI翻訳を利用するようになります。問題は読みやすいといっても、人間がする意訳のように原文の意図や意味を反映しているとはかぎりません。機械がデータとして取り込んだ文章は、あくまでも類似した文章であり、その選択理由は語の同一性、構文の同一性を基準として、最適値として抽出したものです。科学論文のような場合は専門語彙と単純な構文で書かれているので、それでもかなり正確性が保たれますが、少しでも文学性があると誤訳が生じやすくなります。機械がどこまで人間の創造性を模倣できるのか、これからの課題です。人間の翻訳では、過去の資料はあくまでも参考であり、訳者の感性や経験、知識が集約され、直観的なアイデアが用いられます。辞書にない意味や、言外の意味、連想といった翻訳技法が駆使されます。とはいえ、こうした翻訳が大量にあると、機械が統計的に抽出したものが近似的に接近してくる可能性があります。こういう翻訳は人間がなかなか難しい分野に応用することが有益でしょう。例えば、古典の現代語訳、仏典の現代語訳、少数言語の翻訳などです。こうした翻訳は一人の人間がいろいろな文献を読んでは翻訳してきたのですが、インターネット上に蓄積されたデータを取り込み、短時間で翻訳するには機械が向いています。実際、過去の人間による翻訳には誤訳もありましたが、そうした限界を機械が解決してくれるかもしれません。
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