ネイティブにはなれない
語学留学はお金も時間もかかるので、誰にでもできるものではありません。しかもよくある短期留学ではほとんど効果は期待できず、長期にいても現地に溶けこまなければ上達しません。言い方を換えるとコスパの低い効率の悪い言語学習法といえます。
そもそもネイティブ並みに自然に英語が出てくるという夢そのものが間違いといえます。ネイティブnativeというのは生まれつきと言う意味で、本来はnative speaker母語話者のことです。英語でnative townといえば、故郷のことで、生まれつきということであれば、日本に生まれた時点でnative speaker of Englishに外国人家庭でないかぎり、なることはないわけです。言語習得に音韻だけで1万5千時間、基本文法までの6歳のレベルの習得で3万時間を過ごすにはそこに生まれつくという言語環境が必要です。ありえない夢なので、最初から考えない方がいいといえます。
バイリンガルについても誤解が広がっています。二言語話者bilingual speakerの借用ですが、人により内容が異なります。言語の異なる夫婦の間に生まれた子は生まれつき2つの言語に接するので、二言語話者になるのですが、それでも父親と母親では語彙使用や文体などが異なるため、微妙な違いが生じます。仮に複数世代同居で、複数言語を習得したとしても、違いが生じます。多くの場合、家庭内の言語と外で現地の子供と遊んだり、学校に行くと、家庭内言語と社会言語との差が生じます。また何歳まで現地にいたのか、などの条件で内容が変わります。言語だけでなく、経験を通じて学習した文化も複雑になります。いわゆるバイリンガルの人々は言語使用の内容は複雑なのです。そして何よりアイデンティティが揺れます。〇〇人としてのアイデンティティを決定するのは言語と文化、宗教などが主たる要因です。その内容が多様になっているバイリンガルは悩むことが多く、人はうらやむようなものではないのです。
言語は生まれた環境により自然に習得する一方で、環境により習得内容に違いが生じます。それが母語ということです。外国語学習の目的は母語習得ではなく、大抵は実利目的ですから、目的とする実利に沿うような内容でないと意味がありません。漠然と「できたら便利」「自由に会話できたら」という動機では学習を続けるのが難しいのは当然です。よほどしっかりした目的と動機がないと、継続できないものです。
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