師走
旧暦12月は師走です。今では新暦でも12月を師走というようになりました。他の月は旧暦の和名を言うことは少ないのですが、なぜか師走になるとマスコミは盛んにいうようになります。年の瀬ということもいわれます。瀬というのは「流れる水」というのが原義ですが、急流という意味もあります。年末のたまった支払いを行う困難さを、浅瀬や川の流れが急な所を船で行く困難さにたとえて表したということで、年の瀬という表現ができたそうです。「としのせ」という音で覚えているだけで、語源や元の意味など考えることが少ないのも年末だからかもしれません。
師走は旧暦の和名ですが、今年は閏月があるため、新暦の年末まで師走にならず、師走朔日は来年の1月11日になります。それでこのコラムは新暦の方にしました。師走の語源は「師馳す」つまり師匠である僧までが走り回ってお経を上げるということ、となっています。ここでいう師匠というのは職人や芸事の師匠のことではなく、仏教において、仏弟子になるための師僧のことです。師僧は普段はあちこちお経を上げに回るということはないのですが、今月は弟子も忙しく、やむなく師僧も出るということで、忙しい様を表しているとされています。他の語源としては年が終わる「年果つ」という節もあります。また四季の終わりなので、四極と書いて「しきはつ」というのが語源という説もあります。語源というのは本当の語源以外に後付けで出てくるものも多いのが普通なので、どれも真偽を問うよりは、なるほど、と納得すればよいものです。師走にはたくさんの異名があり、晩冬、春待月などはよく文学に出てきます。苦寒というのもイメージがあります。三冬月というのは神無月、霜月、師走の3つの冬のことで、睦月からは春になります。晩冬というのも、早冬が神無月なのだからです。早春という表現は今も残っていますが、他の季節にはあまり使われなくなりました。旧暦の和名のほとんどは月がついていますが、弥生と師走には月が付きません。キサラギも音としては月がありませんが、漢字では如月と書きます。他にも黄冬(おうとう)、弟月(おとづき)、親子月(おやこづき)、限月(かぎりのつき)、建丑月(けんちゅうげつ)、極月(ごくづき)、暮来月(くれこづき)、氷月(ひょうげつ)などがあります。昔はこうした異名を伝統として楽しんでいたわけです。
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