形態素(接辞)からの借用語


アンチ

12月2日のコラムでレトロのような接辞からの借用で日本語になっているのは「例外的」と書きましたが、調べてみると、けっこう例がありました。お詫びしつつ訂正したいと思います。

まずレトロと同じパターンの借用として、アンチunti、マルチmulti、ミスmis などがあります。アンチは「反対」という意味でほぼ独立的に使われますが、どこからこの用法が広がったのか不明です。英語としてはantithesis(アンチテーゼ) のような語があります。アンチテーゼというのは難しい語ですが、ドイツ語である理論・主張を否定するために提出される反対の理論・主張のことです。ヘーゲルの弁証法という哲学的な論理学ではテーゼとアンチテーゼを設定し、議論によって、そこから止揚されたものをアウフヘーベンといいます。よくわからない議論だと思いますが、アウフヘーベンは小池百合子東京都知事が使ったことでテレビでも有名になりました。一般社会ではアンチ巨人とか、アンチエイジング、アンチウイルスのように使われています。日本語ではアンチは名詞として使われるようになってきました。同じように名詞化した形態素借用の例としては、トランスがあります。電気の変圧器はかなり昔からトランスと呼ばれてきましたが、元は英語のtransformerですが、日本語では名詞として一般化しています。トランスは最近、トランスジェンダー、トランスフォーメーションなど政治の世界でも頻繁に出てきます。DXはデジタルトランスフォーメーションの略語ですが、DTではなくDXとされるのは、英語圏では交差crossするという意味を持つtransをXと略すことがあるためだそうです。日本の英語教育では習わない習慣なのですが、知ったかぶりしたがる役人などが好んで使うようになったのが始まりです。

映画撮影の通行人や群衆などの役をエキストラといいますが、元は英語のextraです。英語でも形容詞として独立した語になることもありますが、接頭辞としてextraordinaryのように使われること方が多いようです。意味は「特別な」とか「臨時の」という意味で、映画のエキストラは臨時の意味のようです。

洋服のオーバーは、元はovercoatの略でした。オーバーコートという人はいないほど語として浸透しています。こういうタイプの借用語はたくさんあります。

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