塀の文化
海外に行くと街並みの違いが新鮮です。建物の違いも目につきますが、案外気が付かないのが、塀の存在です。日本でも最近は道路側の塀がない家が増えてきました。欧米だと、都会では玄関が道路に直接つながっている建物が少なくないです。郊外や田舎の住宅エリアだと、玄関前にフロントヤードという広い庭がついている、日本からすると大きな家が普通です。それでも道路側に塀がある家は稀です。お屋敷、いわゆるマンションになると、周囲がぐるりと高い塀に囲まれていることはあります。これは境界というよりは治安上の安全のためです。
しかし日本では、一軒家を建てる時、隣地との間に塀を作るのが普通で、これは境界を示すためです。土地の高い都会では隣地との境界は重要で、互いに塀を作る場合と塀を共有する場合があります。互いに塀を作る場合には塀と塀の間が数センチあるかないかの隙間を作ります。先に家を建てた方が遠慮して、塀を自分の土地の中に作るのが常識とされています。つまり塀の向こうが隣地ということです。この場合、後から家を建てる人はその境界線から少し離して自地に塀を作るので、こういう形になります。家が隣同士同時に建つ場合は話し合いによって塀を共有することになり、境界線の上に塀を建てますから、塀の真ん中が境界線ということになります。ところが後から家を建てた人が塀を作らないことがあります。その場合、本来、境界線は自分から見て塀の内側にあるのですが、一見、共有している塀と見かけは変わりません。所有者がずっと同じであれば、その了解事項があるので、問題ありませんが、売買などで所有者が変わる時、境界線がどこなのか問題になります。土地価格が高い地域では数センチの違いでも、境界線が長いとそこそこの面積になり価格に影響を与えます。そこで最近では境界線を示す矢印や十字のプレートが埋められるようになりました。こういう境界プレートはあまり海外では見かけません。海外では隣と接している建物もよく見かけます。日本でも長屋や商店などは隣家と接しているのが普通で、塀があったのは武家や大店など限られたものでした。ある意味、庶民の憧れだったのが、一軒家を建てるのがブームになったことで、塀を作ることが広がったのかもしれません。境界を作りたいというのも農民の農耕文化の名残りかもしれませんね。
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