分かれる、集まる
「分かれる」という現象は物理的に考えると、1つの現象ですが、それに対する言語表現はたくさんあります。これは同じ現象に対して、捉え方というか、心理的な判断や価値判断が加わるためです。また「分ける」という動詞の目的語が加えられて十五になっています。二字熟語だけでも170語以上あります。それだけ重要な概念だといえます。分かれることと集まること、分散と集合、分離と統合ではなんとなく、まとまっていく、集まる方向が肯定的なニュアンスを感じる人もいると思います。日本人はとくに群れを作ったり、みんなで同じことをするのが好きな国民性のようです。
しかし物は集まったり、分かれたりするのが自然な運動で、人もまた集まったり、分かれたりしています。それらの運動の結果に対して、なにかと判断を加えて評価することが多いわけです。
分散と集合といえば、物理的な感覚があり、とくに感情的なものは湧かないと思います。しかし分断と統一というと、何か政治的なニュアンスがあり、どちらかといえば分断にはよくないニュアンスがあります。分かれることがいつも悪いニュアンスとはかぎらず、分与というとみんなに分け与えるので好意的な感じがします。分乗といえば、全員一緒に乗れないので、分かれて乗るという意味なので、とくに善悪は感じないと思われます。分別はゴミの収集には欠かせない概念で、むしろ近年では重要かつマナーとして守るべき行動です。分娩は出産のことですから、おめでたいことです。
分家は本家に対する概念ですから、なんとなく劣等的なニュアンスがあります。分布は広がりのことですが、数学的なニュアンスがあり科学的な感じがします。分数も数学用語で、分母、分子と共に特別なニュアンスはないと思います。分析は科学に必要な行為です。分泌は医学用語です。分筆は登記に使われる法律用語です。登記は筆(ひつ)で勘定するのですが、あまり知られていません。分社、分祀、分祠は宗教とくに神道で使われる用語です。分煙というのは近年、禁煙が普及して煙草を吸う人と吸わない人をわけるシステムです。時間にも分を使いますが、これは分けることとは直接の関係はありません。分銅(ふんどう)は今では使われなくなった秤の道具です。
分のつく単語はたくさんあり実に多くの意味に分化していることがわかります。
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