満場一致と多数決
1月11日は鏡開きが行われます。鏡餅はその形状が昔の丸い金属の鏡に由来しています。昔鏡は丸い形をした銅鏡で三種の神器の一つでもあります。鏡は日の光を反射し太陽のように光ることから、太陽神である天照大神に見立てられ、神様が宿るものと考えられています。鏡餅は新年の神様である年神様の依り代とされ、年神様を家に迎えてもてなし、見送るための行事の一部で、お迎えした年神様の居場所が鏡餅です。年神様の依り代だったのですから、ゴミに捨てないで、開いてありがたくいただきます。鏡を割るのは縁起が悪いので、開くと表現しています。
日本文化では「満ちる」とか「丸い」ことが縁起が良いと思われています。そのせいかどうかわかりませんが、議事録などでは「満場一致」と表現されることが多いです。「満場一致で否決」ということはあまり言わないので、全員賛成した、ということなのです。「異論がなかった」という解釈もありえます。実際には異論があったとしても、話し合いによって、全員が同意見になった、ということを意味しています。よく考えてみると、実際の議論において全員が同意見ということは滅多にありません。一人くらいは反対意見があるのが普通です。しかし「賛否両論があったが、多数決で以おなり下のように決定した」という議事録はあまりなく、とくに誰かを選任する場合は満場一致が「原則」のように考えるのが日本の風土です。英語では「満場一致して」という場合unanimouslyといいますが、あまり多くはありません。賛成多数の英語はmajority voteとなり、普通のレベルの英語表現で、unanimouslyというのは特殊な言い回しです。
日本では円満解決ということもよくいいます。丸く収まることが良いことなのです。政治の世界では満場一致ということはまずなく、多数決が当たり前なので、「多数は力」という論理が支配しています。じっくり話し合って互いに納得する、ということが滅多にないのは、互いに利害関係があるからでしょう。利害が絡むと妥協が難しくなります。その結果、利権をめぐって多数派工作が行われ、賄賂や裏金が横行することになります。しかし政治から利権を除くことは至難でしょう。「きれいごとで政治はできない」という人が多いのも事実です。正義については満場一致のはずですが。
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