連続と不連続
日本語の連続と不連続は連続が肯定的な意味なのに対し、不連続は不がついて否定的な意味をもっています。ところが英語のdiscreteの対語はnon-discreteで、discreteが肯定的になっています。英語のdiscreteは不連続だけでなく、数学では離散的と訳されています。個別的という訳語もあります。語源的には個別になっている状態を表していますから、日本語だと「バラバラ」と考えるのが一番わかりやすいかもしれません。バラバラの状態というのは物理的にはよくある現象ですが、日本文化ではなんとなく否定的なニュアンスがあり、反意語の「まとまっている」ことが良いようなニュアンスがあります。その延長線上なのでしょうか、連続的と不連続的では、連続的であることが良い意味をもつ場合が多いようです。たとえば会社が長年続いていること、お店が長く続いていて老舗であること、などに良い評価が与えられます。テレビ番組でも長寿番組と称して人間の生命に例えて、好評価が与えられます。マンネリという批判よりは長寿であることが重要視される傾向にあります。
現在、一部でキャンペーンが張られているSDGsでもsustainableという維持に力点があることが多いのは日本の特徴といえます。
日英語で意味が異なる文化の例として「転石苔むさず」A rolling stone gathers no moss.があります。外延的な意味、つまり表面上の意味は「石が転がっていると苔が生えない」ということなのですが、その現象への評価がまったく違うのです。日本語では同じところにじっとしていることがよい結果を生むことの例とされています。「石の上にも三年」という諺もあります。しかし英語の意味では「同じところにとどまっていると、カビが生えてしまう」ということであり、次々と変化を求めて移動することがよいこととされています。結果的に苔とmossに対する評価も違ってきます。この連続性への価値観が仕事への価値観となっています。昔の日本では終身雇用、年功序列が普通でしたが、現在は転職のススメが増えて、終身雇用や年功序列がよくない制度という批判の対象になっています。実際には一つの仕事をずっと続けることと、次々に仕事を変えることの是非は単純には評価できません。伝統的な技はずっと続けることで伝承されていくのですが、現在はそれをAIに学習させロボットで置き換えることが「技術」として肯定されています。それは人が仕事を継続することで得られる技術を「誰でもできる」ようにすることで省力化を図るという合理的判断が出発点であり、「同じことを延々と続けているのは無能の証」という米国流の思想が反映された結果といえます。米国文化では変化こそ重要であり、同じことの継続に意味はない、という価値観が一般的です。古い物がいけない、ということではなく、一方で骨董品への憧れもありますが、限定的です。そのため次々に新モデルを発売することで利益を得る企業が圧倒的多数です。日本はその文化の波に飲み込まれてしまったのが現状です。
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