内包的意味connotation


高低

Connotationは含蓄と訳されることもありますが、dennotation外延的意味とセットで考えないと誤解が生じます。外延と内包という用語は難しいニュアンスがありますが、簡単にいえば、外延的意味というのは誰もが同じ内容を思い浮かべることができる意味であり、内包的意味というのはいわゆるニュアンスのことで、人により感じる意味が異なる印象のようなものです。この2つの意味の境界が曖昧で、外延的意味は社会で共通化されている、内包的意味は個人によって異なるといえますが、集団で共有されている内包的な意味もあり、単純に分類はできません。

例として、「高い、低い」を考えます。ある基準より上にあれば「高い」、下にあれば「低い」と定義できます。こうした物理的な定義は外延的意味です。しかし「背が高い」の高いは一般的には良いニュアンスがあると思われます。それが内包的意味です。同じ「高い」でも「血圧が高い」場合はニュアンスが否定的です。「値段が高い」の場合は人により意味が反対になります。物を買う立場であれば「高い」のは困ります。物を売る立場であれば「高い」ほど、うれしいものです。しかし航空機の高度のような場合は、一般的には高くても低くても、とくに肯定的でも否定的でもありません。そもそも「高度」は「高さ」なので、「低度」という表現はまず使いません。それは高低の基準が地面にあるからです。飛行機の高度は地上からの距離で「高さ」しかないのです。そして高度は外延的な意味がないといえます。もっとも、飛行機のパイロットは高度には注意を払っているので、「低すぎる」場合には緊張するでしょうから、否定的な内包的意味があるかもしれません。この場合は個人ではなく、パイロットという特定の集団に共通しています。パイロットにとって、高度の基準は地上だけでなく、航行のための標準高度が基準になっているので、「低い高度」という語義的には矛盾するような表現が存在します。似たような現象として、「高速道路」があります。普通は「低速道路」ということは言いません。この場合の高速は速度のことよりも、一般道路との比較で定義されています。しかし実際には、高速道路で渋滞すれば、低速になってしまいます。「これじゃ低速道路だ、高速料金返せ」のような表現はあるかもしれません。

この内包的意味をAIが処理できるかどうかは疑問です。理由は内包的意味は各個人が感じるものであり、データを集めても個人に当てはまるとはかぎらないからです。外延的意味の方は社会的・集団的に共通な意味ですから、解説も容易でしょう。すでに辞書に搭載されていますから、辞書の記述を網羅して統合すれば、幅の広い意味が提示できます。しかし内包的な意味は人により受け取り方が異なることから発生した意味であり、個人であることも、また特定の集団であることもあります。こうした曖昧な意味の広がりをAI技術が収集して、整理できるものか大いに疑問があります。人間のコミュニケーションには内包的な意味の交換もあるので、機械認識がどこまでできるものか興味があります。

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