内包的意味の文化差


hotdog

内包的意味は個人差あるいは集団差という説明をしましたが、この集団には地域や国家、民族などいろいろな形があります。とくに問題になるのが言語間のニュアンスの違いです。たとえば犬は英語でdogといいますが、外延的意味はほぼ同じですが、内包的意味に大きな差があります。英語のa hot dogは犬の意味はまったくなく、日本語でもホットドッグのようにいうことで、違いを示しています。英語でなぜa hot dogというかというと、新聞「ニューヨークジャーナル」の漫画家だったタッド・ドーガンによって付けられた、という説が定説化していますが、他にも諸説があるようです。パンにソーセージを挟んだものをホットドッグというのですが、元はフランクフルターと呼んでいたそうで、日本ではウインナ・ソーセージのような細いソーセージでもホットドッグと言っていますが、本来はフランクフルト・ソーセージのような大きくて太いものを意味していました。ソーセージは茹でて食べるのが現地の食べ方ですが、熱いのでそのままもてないのでパンに挟んだ、ということです。そのパンに挟んだフランクフルトの姿がダックスフントという犬の形に似ているという連想から、Dachshund(ダックスフント)」のスペルを思い出すことができなかったタッドは、「Hot dog(ホットドッグ)」と書いてしまいます。これが「ダックスフントソーセージ」が「ホットドッグ」として世に広がったとされています。主に野球観戦の時に食べられていたのが、次第にアメリカ各地の街中の屋台で売られるようになり、それが日本に入ってきたので、その頃には語源は知られず単純にアメリカンフードとして広がりました。こうして語源を知ると、ホットドッグのドッグは犬だったことがわかります。

しかし日本語で「警察(サツ)の犬」という場合、タレコミ屋とか手先という意味があります。英語ではnarkといいます。A dog of policeでは警察犬の意味になってしまいます。動物に例えるならstool pigeon という俗語表現があり、pigeonはハトのことです。犬が従順な性質をもつ動物という内包的意味は日本語でも英語でも共通なのですが、そこから連想される意味は文化により差があるという例です。

さらには「日本の首相はアメリカのポチだ」という表現が時々でてきますが、このポチは犬の意味です。これを英訳するのはぴったりはまる訳語がないのですが、a poodle of Americaという訳を検索で見つけました。うまい訳で、英語圏でも意味が通じそうです。しかし一般に広がっている表現ではなく、あくまでも揶揄(やゆ)した例えです。

犬の例でもわかるように、辞書に載っている最初の訳語は外延的意味であり、単語学習ではそれだけを覚えてしまいますが、実際に運用する段階になると、内包的意味が重要になってきます。内包的意味は用例をみないとわかりませんし、場面によって、人によって異なるので、面倒になって無視しがちですが、本当はそこに言語や文化のおもしろさがあり、学習が楽しくなります。

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