春の支度


準備

小正月と雨水が過ぎ、しばらくは行事がありません。春の訪れが実感できる昨今は、春から始まる作業への準備期間です。今は新暦で行事が進行していきますが、それでも4月からは進学や就職、新事業などが始まることも多いと思います。最近はいきなりスタートというか、昔はプレーボールという表現だったのが、キックオフという、野球からサッカーに用語が変わったあたりから、いきなり始めるのが普通になってきました。しかし何事にも準備が必要です。キックオフにしても、蹴る前に後ろに足を上げる準備動作や、その前に反対側の足で踏み込むなどの準備動作が必要です。ホップ・ステップ・ジャンプの前には長い助走があります。小正月が過ぎた今がちょうど、春の作業の準備期間なのです。

準備に何が必要なのか、というと、これは経験に基づくルーティンがあると便利です。何をしたらよいのかウロウロしているようでは、肝心の春からの本番が思いやられます。今はマニュアルつまり手引書ばやりで、マニュアル通りやることが推奨される傾向にありますが、これは初心者の話です。ベテランになればマニュアルなど不要で、何も考えなくても段取りがわかっており、必要な道具を揃えることができます。これも経験であり技術の一部です。準備があって、本番作業があって、後始末がある。これが作業の常識です。ところが最近の作業マニュアルの多くは本番作業しか書いてないことが多く、作業者も準備や後始末を軽視する傾向があります。この準備と後始末の手抜きが重大な事故の原因になることが、事故が起こってからわかることになります。

農業はまず畑を起こすことから始まり、種を播いて、あるいは苗を植えて、育てて、収穫を回収し、その後を来年のために始末をしておく、までが一連の作業になっています。消費者は収穫物だけに関心が行きがちで、価格もそこだけに注目します。最近は経済原理とかいう乱暴な議論から、需要と供給だけで価格が決まるというシステムになってしまいました。しかしコストという面からいえば、準備や始末にも費用と時間がかかります。これは農業だけでなく工業にも当てはまる原理です。生産コストを考える時、本作業における材料と労力だけを念頭におく傾向が顕著になっています。実際には準備と始末にも材料や労力がかかるのですが、考慮されることは少ないです。本来は資源の一つであり、大きな事業であれば重要視されます。しかし個人労働のような規模だと無視されがちで、税金の計算でも、経費の中に準備や始末が含まれることは稀です。とくに準備や始末は年度をまたがることが多いので、単年度計算の事業申告制度では無視されています。何年も準備して、生産しても準備期間のコストは反映されにくいです。

準備は非常に重要な期間です。受験は本番前の勉強が決め手なのは誰もがわかっています。合格したら、準備期間の成果を正しく評価し、次の段階への準備を始めるべき時期です。入学後、就職後、事業開始後が本番ですから、春になる前にじっくり準備することが成果をもたらします。

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