日本の障害者福祉
外国人旅行者は点字ブロックに驚くのですが、実際、海外では見たことがありません。これは日本の福祉政策が世界でもトップクラスであることの証です。日本ではなぜか「日本の福祉は遅れている」と叫ぶ人が多いのですが、福祉は完全ということはまずありえなく、どこか足らないのが普通です。日本が遅れている、という主張をする人がよく比較するのが北欧ですが、北欧とひとまとめにいうことはできず、国ごとにそれぞれ政策は違っています。北欧の多くの国では、税金がものすごく高く、所得税が50%、消費税が25%で、可処分所得は所得の4分の1あるかないかです。日本の財務省が喜びそうな数字ですが、社会保険料のようなものはないので、日本では社会保険と所得税を合わせれば30%になり、それに消費税が10%ですから、日本もけっこう高税国家です。ただ違いは北欧国家の場合、国家が使うのが軍事予算などで10%程度、残りは人口比に応じて地方政府に分配されます。福祉予算はそこから使われるので、国家予算が多くを占める日本とはシステムが違います。国家と地方政府では現場の近さが違うので、日本の予算が包括的なのに対し、北欧国家では地域分散的になり、きめの細かさが違っています。そもそも予算を決めるのは議会なので、日本は国会の議論になりますが、北欧国家では地方議会になります。そもそもの国の成り立ちや制度が異なるので、比較することには無理があります。よくテレビなどで「北欧では」という紹介をする場合、特定の市や街の制度を国中でされているような誤解を与える報道がされます。それをネタに日本の福祉は遅れている、という主張には欺瞞もあります。
日本の福祉は点字ブロックの例が示すように、障害者福祉は相当進んでいて、近年ではパラリンピックに代表される障害者スポーツが普及しており、事故などで障害になっても新たな人生を送れるようになった人が増えてきました。その背景には福祉用具の発達があり、開発する企業も増えてきたのは、経済的環境も整ってきたといえます。福祉の対象は障害者だけでなく、高齢者や生活困窮者も含まれます。年金という形で一括りにされますが、障害者年金と高齢者年金と生活保護費は別々の予算です。高齢化社会になることは何十年も前からわかっていたことですから、高齢者年金制度の破綻は原理的にわかっており、不足分を福祉目的税として新設することで対応する政策がとられました。ところが名称を消費税に変え、福祉目的以外にも使用できるように一般税に繰り込むことで、裁量権を増やそうという企みで政策が歪んでしまいました。そのため福祉目的以外に消費税を使えば当然、福祉関係税は不足になりますから、その分の補強をということで増税せざるを得ません。そして高齢者が減れば福祉関連予算は減りますが、消費税を減税することは多分ありません。稚拙な理屈ですが、公開されないので国民は黙って納税することになります。現状でも国家予算は潤沢ですから、実際に日本の福祉はかなり高度になっています。不足にはキリがないのですが、反面どこが充足されているのか反省することも大切です。
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