教師の位置
教室における教師と生徒の位置関係は対面であるのが一般的です。先生が黒板の前に立ち、生徒は黒板に向かって座るというのは万国共通のようで、本能的にそれが一番わかりやすい方法なのかもしれません。しかし教室のない僻地などでは、木陰で先生が立って、あるいは座って本などを示し、生徒は固まって座って、それを見るというスタイルもみかけます。これは先生と生徒の関係は位置的には固定しているといえます。
塾の個別指導や家庭教師などでは、先生が生徒の脇に来ることもあるようですが、この位置関係は、より親しみを与える位置といえます。特殊な例としては、書道で先生が生徒の筆を上から持ち、運筆を指導する場合もあります。あるいは美術の時間に生徒の後ろから一緒に描いている絵を見る、ということもあります。
位置は一般的な心理として、快適な距離と不安な距離には文化的な法則性があります。例えば日本人は対面の時、お互いにお辞儀をしても頭がぶつからない程度の距離が安心です。しかしこの距離は欧米人には「よそよそしい」感じがするようで、彼らはお互いに握手ができる距離が安心できます。この距離は日本人よりかなり近くなります。
心理的距離の文化的違いとは別に人類にほぼ共通と考えられる位置というものもあります。対面は公式的な感じを与えるのに対し、横に並ぶとより親密な感じになります。また背後に来られると不安を感じます。この相互位置関係と心理的距離の組み合わせにより安心感や不安感、不快感、親密感などが表されるのですが、文化的な違いが大きく反映されます。たとえば横に並ぶ場合、日本では腕を組んだり、手をつないだりするのは親密な証しです。肩を抱くのも親密な気持ち表れです。しかし日本の要人が渡米した時、相手方の大統領から肩を抱かれていることが報道されますが、アメリカ側は親密さを表したと捉えられるのに対し、日本側は軽く扱われた、と捉えることがしばしばあります。しかし同じ米国大統領でも手をつないだり、腕を組むことはありません。このように位置や距離はほぼ同じでも、それに伴う行動の違いが文化の違いにもなります。
こうした立ち位置や距離、行動は無意識に行われることがほとんどなので、文化の異なる相手に対しては注意しなくてはなりません。
この位置と距離と行動は異文化だけでなく、日本人同士でも社会的関係により法則性を理解していないと誤解を招いたり、パワハラやセクハラの原因となります。面接や相談の場において、対面式が用いられるのはそれが理由であり、対面の場でさらに真ん中に机やテーブルがあると、さらに心理的距離は広がります。相談する生徒にとって、余り距離が近いのも不安ですし、遠すぎるのも信頼感が得られません。また状況によっては対面でなく、テーブルの角を挟んで横に並ぶという位置も親密性と距離感のバランスアうまくとれることもあります。
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