春土用の入り


しらす

土用というのは雑節の1つです。雑節というのは二十四節気とは別に日本独自に設定している季節の行事(暦日)で、節分や彼岸、八十八夜など、よく聞く習慣になっています。土用は夏の土用の鰻がよく知られていますが、実は春、秋、冬にも土用があります。土用は日本の暦日ですが、その根拠は古代中国の陰陽五行説にあり、万物は「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素から成るという説で、これを四季に当てはめて春は「木気」、夏は「火気」、秋は「金気」冬は「水気」と称されます。しかし、これだと「土気」を当てはめるところがないため、それぞれの季節が変わる前に「土用」の期間を置き、これを土気としたと言われています。春土用の期間は、二十四節気の立夏の前の18日間になります。今年はそれが4月16日から始まるわけです。つまり二十四節気の立夏は5月4日から、ということになります。

夏土用は鰻が定番になっていますが、春土用は「い」のつく食べ物、もしくは白い食べ物になっています。いのつく食べ物には、いわし、いしだい、伊勢海老、イナダなどの魚やいんげん豆、いちご、いか、いなり寿司、芋羊羹、糸こんにゃく、いちじくなどがあります。洋物だとイベリコ豚とか、韓国の石焼ビビンパも「い」がつきます。白い食べ物には、しらす、豆腐、白米、うどん、カリフラワー、大根などがあります。春土用はこれらを食べるのは戊の日がよいとされています。

土用の間は土いじりが禁忌とされていますから、農業は元より、道路工事や家の建築なども咲けなければならないことになります。現代だとそれでは困りますから、昔から「間日(まび)」という制度があり、この日は土公神が土の中から出て天上に行くとされています。間日は八専という思想が背景にあり、十干と十二支に五行を割り当てて干支の気が重なる日です。十干十二支の1番目である甲子とし、終わりの60番目を癸亥とした場合に49番目の壬子から60番目の癸亥までにこの重なる日が集中しており12日の内8日が該当することになります。それが間日になります。

土用は土いじりをしない、ということなので、昔の農民には年に4回、それぞれ18日間の休みがあったのと同じです。農業は休みがない、といわれますが、それは現代の話で、昔はそれなりに休む時間がありました。18×4=72ですから、冬の農閑期も合わせると結構休みがありました。欧州の農民は農奴といい、奴隷労働で休みなく無給でこき使われたことに比べると、日本では年貢という租税をとられますが、生産は換金でき、奴隷ではなく、休みもありました。無論、地域によって豊かさは異なり、格差はありましたが、ドラマで見るような悲惨な状況は干ばつによる飢饉を除けば、欧州よりも人間らしい生活をしていたことがわかります。時代が違うので比較するのは正しくないですが、現代のサラリーマンは過酷な労働条件下にあり、租税も高く、生活は厳しいのではないでしょうか。時代による発展は本当に人間に幸せをもたらしたか疑問ですね。

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