社会変数
本人の主観であるアイデンティティの逆で、客観的な立場から人を分類する手法の1つが社会変数social variablesという概念です。アンケートなどで、性別、学歴、収入などを書かせられることがありますが、あれが社会変数です。アンケートが集まったら、その社会変数ごとに分類し、調査結果との関連を統計数学的に分析するのが一般的な社会学の基本的な手法です。統計学的には社会変数同士の関連、関連係数を計算したりするのですが、その際にアンケートした集団の母数と統計上の集計数との関連も計算しますが、それが信頼度です。まず集団の人数、つまり母数が少ないのは単純に信頼度が低いといえます。多ければ多いほどいいのが理屈ですが、多数を調査するにはコストも時間もかかります。どのくらいの人数が必要かは調査内容にもよりますが、最低でも20人というのが数学的な限界です。実際にはパーセントに計算がしやすいということもあって100人くらいが最低としている例が多いです。
社会変数は何を設定するかは任意ですが、分析結果として何か有用な提言が必要ですから、わかりやすい変数で、しかも明確な違いがでそうな変数を選びます。これは調査者の経験による知見が多いのですが、実際問題として、何度もアンケートをとるわけにはいきませんから、「欲しい結果」を想定して変数を設定することになります。それでもあまり多くの変数を設定すると回答者が面倒になり、全部を回答してくれないとか、変数同士の関連がわかりにくくなります。そこで一般によく使われるのが性別や年代別です。これなら答えやすいのですが、収入などは正しく答えてもらえないことがあります。また支持政党を変数にすると「支持政党なし」が過半数を占めるという結果になり、変数設定の意味が薄くなってしまいます。
アンケートに答える場合、回答者はそれらの変数に対してアイデンティティをもっていることが前提となります。たとえば日本人にアメリカの共和党支持者か民主党支持者かを聞いても、ほとんど回答なしになります。社会変数ではなく、質問事項であれば、回答が出るかもしれません。この場合の支持政党は分析のための社会変数ではなく、分析対象の質問ということです。このように社会変数は回答者のアイデンティティが確立していると予想されるものに限られます。そのアイデンティティは個人差があるようなものでなく、一般性、共通性があるもの、ということになります。それはどういうものなのか、という知見には経験が必要で、先行研究や他の調査研究を参考にすることになります。しかしそれはある意味、最初から偏見をもつことになります。そのことを理解しておかないと社会調査は成り立たないのですが、案外、そうした視点は忘れられがちです。漫然と一般的な社会変数を設定し、適当な数の調査をして、分布だけを結果と示す調査が蔓延しています。本来であれば、その分布の意味を分析しなければならないのですが、統計検定も行わず、グラフを示して終わり、という調査が多いのはなげかわしいことです。
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