ギャロデット大学とメリル学長


十三夜の月のイラスト

今回のドライブの最大の目的地は聾者大学のギャロデット大学で、手話学者に会うためでした。当時の学長であったE・メリル氏が来日された折、招待者の当時の東京学芸大学の小川仁教授からの依頼で私が通訳を務めたご縁がありました。小川先生には一方ならぬお世話になり、アメリカ留学の支援をしていただいただけでなく、帰国後も公私に渡りお世話になり、そのご縁で手話通訳技能検定試験(手話通訳士試験)の設立をお手伝いすることになり、厚生省の制度検討委員として、また試験設立後の幹事委員として貢献できる機会をいただけました。前述のカール・カーシュナーを紹介していただいたのも小川先生です。私の今日あるのはすべて小川先生のおかげで、直接の弟子でもない私をいろいろご指導いただけたのは、広いお心の方であったからで、福祉関係の歴史や行政のしくみなどをお話の中で学ぶことができました。

そうした関係ができる前に英語力を買っていただき、メリル氏という重要人物の通訳をさせていただいたことで、ギャロデット大学訪問時は特別ゲスト扱いで、貴賓室のようなゲストハウスに泊めていただき、学内の学者との面談の手筈を整えていただけました。普通に飛び込みで訪問しても、忙しい方々にはなかなか会えるものではなく、学長のゲストという特別待遇だからだったといえます。アメリカはある意味、日本より身分社会、階級社会で、上司の命令は絶対です。その上司は公募や選挙であることが特徴であり、日本ではなかなか理解できない点です。世襲もあるのですが、能力主義でないと組織が負けてしまうので、公募と選挙によって選ばれた人が絶対者になります。その頂点が大統領であり、大統領としての矜持というか、制度上の尊敬をpresidencyといい、国民も大統領本人も尊重します。完全世襲ですが、日本の天皇の存在も似ている点があります。

ギャロデット大学では学長には数分お会いしただけでしたが、学長秘書が数々の手配をしてくれました。1つはMusignという演劇です。今では日本でも時々ありますが、手話とミュージカルを合体させたもので、手話演劇はNational Theater of the Deafというユージン・オニール演劇研究所の付属施設として存在していました。このNTDにオニール研究所を訪問した黒柳徹子さんが感激し、日本にも聾者劇団を作りたいということで、「窓際のトットちゃん」というベストセラーの印税をすべて寄付して、当時NTDで勉強中だった米内山明宏さんを中心に日本ろう者劇団JTDを設立したことは有名です。

Musignはそうした芝居ではなく、有名音楽をダンスにして手話表現を加えた新しいジャンルでした。当時大人気でチケットがなかなか買えない状態でしたが、学内講演ということで、特別に家族で招待していただきました。聾者と音楽という取り合わせは強烈なショックでした。そして次回からご紹介する手話学創始者のストーキー、新進のリデル、ジョンソンなどの他に、コーネットというキュードスピーチCued Speechという今では忘れられた口話法の創始者にも対談できました。メリル氏はその後の聾運動で、最後の聴者学長になってしまいました。

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