トリアージ
トリアージというのは災害時の治療の優先順位のことですが、この思想は日本人にはなかなか理解できないようです。重傷者から治療していくことにはあまり抵抗はないようですが、黒判定つまりもう死亡と同様で回復の見込みがない場合に最低限の治療しかしない、実際にはほぼ放置される、という選択に抵抗感があるようです。
防災訓練などでは、準備用品などには丁寧な説明がありますが、トリアージについては説明者にも心理的抵抗があるようで、詳しい説明はないことが多く、色分けし優先順序が赤、黄色、緑の順になるという説明だけで終わることが多いです。見込みのない黒について解説することには抵抗があるようです。
これは少しでも多くの命を救うための合理的判断で、欧米では抵抗なく受け入れられるのですが、日本では事情が違うようです。戦争時の軍では普通に行われていたのですが、長く戦争体験がない日本では心情的に合理性だけでは受け入れにくくなったようです。
江戸時代は火事が多かったそうですが、火事になると木造家屋が密集している江戸の町では、風下の家を壊して延焼を防ぐという方法が一般的でした。火消しが鍵の付いた棒をもっているのは、打ちこわしのための道具でした。また長屋などはあえてがっしりした造りにせず、簡単に壊れるような建て方をしていました。大店では土で作った蔵を建て火が回らない防火壁の役割をするようになっていました。これも合理的な選択肢です。
避難の際は要援護者から優先して避難し、援護者が一緒に避難するのが鉄則ですが、先のいくつかの震災では、介護者や消防団の人が大勢被災しました。もう逃げられないとわかった時、介護している人を捨てて自ら逃げるという選択をしなかったからです。
航空機の避難ガイドでも、酸素マスクが下りた時、まず自分にマスクをつけて、それから子供にマスクをつけるよう指示しています。心情的に子供を優先しがちですが、そうすると共倒れになる危険があります。
これが自助を優先し、共助がその次、公的な公助が最後というのは、順序の問題で速さもその順番なのですが、理解がまだ浸透していないようです。改めて避難ということを合理的に考えてみることが大切です。
ワクチン接種の優先度もトリアージと同じ原理なのですが、それぞれの利害の主張が目立ちます。合理的判断は日本人は苦手なのかもしれません。
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