雨水(うすい)と雛飾り
2月18日は二十四節気の雨水です。二十四節気は太陽の運行なので、新暦でも時期はほとんど変わりません。雨水は「うすい」と読みます。アマミズではないので誤解のないように。今では二十四節気よりも「雨水タンク」のような用例の方が多いですね。雨水とは、雪が雨へと変わって降り注ぎ、降り積もった雪や氷もとけて水になる頃という意味です。実際にはまだ雪深い地域もありますが、厳しい寒さが和らぎ暖かな雨が降ることで、雪解けが始まる頃でもあります。凍っていた大地がゆるんで目覚め、草木が芽生える時期です。雨水になると雪解け水で土が潤い始めるため、農耕の準備を始める目安とされました。この頃になると、寒い日が続いたかと思うと温かくなり……を繰り返すようになります。こうした様子を「三寒四温(さんかんしおん)」といいます。3日ほど寒い日が続いたあとに4日ほど暖かい日が続いてこれを繰り返す、という寒暖の周期を表しています。立春から春分の間に初めて吹く南寄りの強風を「春一番」と呼びますが、春一番が吹くのもこの頃です。今年は早くから暖かい日が多くなり、梅や菜の花が咲くのも早い地域が多いようです。春を感じるのが早い年ですが、旧暦だと実感がわきます。
二十四節気では雨水の前は暦のうえで春となる立春で、雨水の次は冬ごもりしていた生き物が活動し始める啓蟄(けいちつ)となります。七十二候では次のようになっています。
初侯:土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)。「脉」は脈の俗字です。まだ気温が低いので、雨が降っても乾きにくいうえ、雪解けも加わって土がぬかるんできますが、これを「春泥(しゅんでい)」といいます。また、春にしとしと降る雨を「春雨」と呼びます。「春雨じゃ、濡れて参ろう」という月形半平太の科白を知っている人も少なくなりました。かつて雨水の初候は獺祭魚(だっさいぎょ)/獺魚を祭る(かわうそうおをまつる)でした。これは水中に棲む獺が魚を捕まえては岸に並べる様子が祭事をしているように見えた、という中国の伝説に由来します。獺祭といえば今では日本酒の銘柄として有名になりました。
次侯:霞始靆(かすみはじめてたなびく)春霞がたなびき始める頃という意味です。野山に霞がたなびき、山のふもとに白くただよう様子は美しいもので、「枕草子」の序文でも有名です。同じ状況でも春は霞、秋は霧と呼び分けてきました。また、霞は夜には使わず、朧と言います。だから、春の霞んだ月を「朧月(おぼろづき)」といいます。こういう教養は大切です。
末侯:草木萌動(そうもくめばえいずる)草木が芽吹き始める頃という意味です。地面からは草の芽がいっせいに萌え出してきます。草の芽が萌え出すことを「草萌え(くさもえ)」と言います。
雨水にひな人形を出すと良縁に恵まれるそうです。ひな人形は立春を迎えたら飾ってよいと言われていますが、ちょっと早いと思ったり、つい出しそびれてしまうという人は、雨水に出すのがおすすめです。もともとひな祭りは水に関係する行事だからです。
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