補綴産業 prosthetic industry
補綴器具開発はこれまで、損失した肉体の補完という意味が多かったため、機能の回復に重点が置かれてきました。しかし、パラスポーツなどによる補綴器具の進化により、機能の補完という目的から、さらに人間が本来もつ機能よりも優れた機能をもつ器具へと進化する可能性を秘めています。その1つがVR眼鏡です。眼鏡は本来、視力の低下による生活上の不便を解消することが目的でしたが、仮想現実(バーチャル)な世界の進化により、現実には見えない世界が見えるような錯覚を起こさせる器具へと進化しました。ヘッドフォンやイヤーフォンも従来は小さな音を拡大するだけの器具でしたが、音源となる機械の進化により、現実にはありえない音が聞こえるようになってきています。目と耳については、ゲームの進化が補綴器具の進化を促進し、現実とは全く異なる世界を感じることができるようになってきています。近年は触覚についても研究が進み、実体験に近い圧力感覚が通信により伝えられることができるようになってきていて、触覚の通信がかなり進化しています。嗅覚と味覚はまだ研究途上のようですが、これらが完成すると、人間の五感がすべて補綴されるようになるわけで、しかも補綴ではない付加部分があるので、補綴という概念は変えなければいけなくなります。
概念がどう変わろうと、補綴に関わる産業が新たな産業として発達する可能性が増えてきました。眼鏡が視力の補綴であった時代から、現代では「おしゃれアイテム」としての機能が重視されるようになり、カラーコンタクトのように、補綴機能とは異なる目的の商品も増えてきました。付け爪やアイラッシュ、ウイッグなども補綴ではなく美容アイテムとして商品化されています。補聴器も補綴器具だけであった時代から、少しずつデザイン性が重視されるようになり、イヤーフォンとの区別ができにくいほどになっています。車椅子はすでに各スポーツ用に特化した進化が進んでおり、一方で家具との調和をとるため、室内用の木製の物も出てきています。外用と家用で車椅子を使い分ける時代も遠くないと思われます。視覚障害者用の白い杖は法律的に白と規定されているため進化しにくい面はありますが、老人向けの杖はカラフルなデザインになってきています。また視覚障害者用の白杖にはGPSが内蔵され現在位置を音声で伝達したり、危険を知らせる機能のものもあるそうですから、今後は目の代わりだけでなく、新たな機能が付加される可能性もあります。
補綴器具は商品としての開発の可能性を秘めていますが、一方で大量生産には向かない側面ももっています。障害や機能損失は個人により程度も内容も異なるため、それぞれに合わせた商品開発が必要です。現状では個別のニードに合わせた開発が必要で、職人技による製作と調整が必要なため、大企業があまり取り組んでなく、小さな会社に特化している状態です。しかし、全体としての需要はかなり大きく、高齢化社会になるとその需要はさらに大きくなると予想できます。
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