漫画とマナー


漫画

最近、インバウンドが激増して、外国から多くの観光客がやってきますが、彼らの目的は風景は2番目であることが多く、リピーターになればなるほど、日本の伝統文化や、人の優しさ、マナーの良さを高く評価しています。またマンガは世界を席巻しており、子供の頃、テレビで見た漫画の聖地を巡ったり、フィギュアーを買い集めたり、マニアックな旅行者も増えています。

この2つの観光の目玉である漫画とマナーの共通点は、どちらも少し前の日本では評価が低かったものです。漫画は子供の読むものであり、大人であるサラリーマンが通勤電車の中で漫画を読んでいることが批判や侮蔑の対象であったのは、それほど昔のことではありません。ところが今やCMや公報にまで漫画が激増していて、それは「わかりやすくする」という目的が動機のようですが、それだと今も漫画は低俗という意識が垣間見えます。実際の漫画のレベルは低俗なものもありますが、かなり知的に高度なものまであって、バラエティに富んでいます。文字文化を高尚と思うのは、文字が記号性が高いと思うからであり、視覚化という点では文字も絵も同じです。違いは文字が音声言語を基盤とした記号体系であるのに対し、絵はイメージであって訴求力がより強いということです。外国文学は読むのが大変ですが、外国漫画や外国絵本はより簡単です。実際、日本の漫画が世界で人気が高いのは、絵であったことが原因です。セリフは当然、その国の言語に訳されていて、それによる理解の貢献度も大きいのですが、言語によって裏打ちされたイメージそのものが深く心に残っているのが漫画の効果ということがいえます。

日本人のマナーの良さも、外国人から指摘されて初めて気が付いたのであって、むしろ当然なこと、当たり前のこととして受け入れてきたのが日本文化です。昔は「えらいね」とか「よくできたね」などの褒めことばで、子供たちのマナー指導をしてきた結果です。「おもてなし」というのもオリンピックでキャッチフレーズにしたあたりから、商品化していきました。おもてなし、は商品ではなく、元来は礼儀の一つで、接客の姿勢でした。それに対して、客側も感謝を込めて、心づけをしたりしたものです。ところがこの心づけもチップという外国の労働対価やビジネスの制度と混同され、いつのまにか、サービスという名になってから、無償提供という面だけが強調されるようになりました。その結果が現在、カスハラと称される暴力的な客が増えることになってしまいました。礼儀やマナーというものは、する側とされる側が等しく理解していることが前提であり、一方が理解不足では成立しないものです。これは異文化同士の接触ではほぼ不可能といえます。文化を共有していないのですから、対立的になるのは自然な現象です。オモテナシ文化のない国の人からすれば、無償の労働提供は気味が悪いか、裏でそれなりの報酬がある、と考えるのが普通です。したがって、高級店でのオモテナシは抵抗感がないのです。欧米では高級店ほどチップが高いのですが、それがないのはかなり「お得」ということになります。

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