宗教の定義
宗教の起源を研究する上で、宗教とは何か、つまり宗教の定義が必要になります。ヒトの進化の過程でいつから宗教が始まったのかを決めるのは相当困難なようです。現在、いろいろ議論になっているのはネアンデルタール人やデニソワ人などの「旧人」とホモ・サピエンスのような「新人」の境界が言語や社会形成、宗教などの発生と関係があると考えられているそうです。新人になって、自分以外の死を認識し、埋葬のような行為をすると考えられているそうです。その最初はいつなのか、少なくとも12万年前には、意図的に埋葬された人間の遺体があったと考えられているそうです。新人(ホモ・サピエンス)が死者を埋葬した最古の確実な例は、中石器時代(約30万年から3万年前)であるといわれています。けっこう幅があるので、特定ということにはなっていませんが、人類考古学上はこの程度の幅は「誤差の範囲」ということのようです。つまり年代の測定法はかなりおおざっぱというのが現状です。また、絶滅した人類の祖先が、約30万年前の現在の南アフリカで死者を埋葬したことを示唆する研究もあるそうですが、この研究については科学界で論争となっています。この説ではネアンデルタール人の前の種類ということになりますが、そもそも現状、人類の祖先がアフリカで生まれ、アフリカから出て世界に広がったことは間違いなさそうですが、そのルートについては議論があります。そして最新のDNAによる研究では、現代人の遺伝子の中にもネアンデルタール人由来のものが残っており、地域によってその量に差があることが指摘されています。そして旧人と新人が同時期に併存していた時期と地域があり、交雑した、いわゆる混血があったことも指摘されているので、事情はかなり複雑です。単純に旧人と新人の違い、というような分類はできないことになります。(参考:篠田謙一「人類の起源」)そして埋葬といっても、現代でも土葬や火葬その他がありますから、どれを採用するかで違ってきます。土葬にしても現在のように深く掘って埋めるのは比較的新しく、最初は土をかける程度であったことが想像されます。それでも動物たちは死体を放置して去っていくだけですから、何かの作業をすれば埋葬ということになります。土器ができて、その中に入れるというような形になれば完全な埋葬といえますが、それ以前は曖昧でしょう。こうした明確な形での遺跡があれば埋葬があった証拠で、それが宗教意識のはじまりということはできそうです。しかし、遺体に土をかけるだけで、死を悼む気持ちがあったとはいえそうですが、それが宗教の起源とまで断定するのは問題ありそうです。現在の宗教を見ると、死生観は確かに基本にあっても、宗祖がいて、宗祖崇拝が基本になっているからです。死生観の存在だけをもって宗教の起源と考えるのは短絡的といえそうです。また宗祖をもたないアニミズムは宗教なのかどうかという議論は宗祖をもつ宗派から反対があります。またそれをもって「原始的」と決めつけるのは偏見です。そして宗教にも進化を認めるのは、ある意味、論理矛盾ともいえます。
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