長月朔日



グレゴリオ暦9月26日は旧暦九月一日、新月であり長月の始まりです。長月の語源は夜長月だそうですが、一番夜の長いのは冬至ですから、長月の意味は暑い夏の寝苦しい夜が過ぎて、涼しい秋の夜はゆっくり楽しめるので、毎日長くなっていく夜を楽しむ日本の風情が表現されているように思われます。もっとも一番短い夏は夏至で、それはとっくに過ぎているので、現実の夜の長さというよりは心情的な夜の長さということになります。
長月の異名には晩秋(ばんしゅう)というのがあり、文月から長月が秋ですから、秋の最後の月で晩秋です。秋の終わりをさす異名としては「季秋」というのもあります。
長雨月(ながめつき)というのは文字通り秋の長雨を示します。今では天気予報の秋雨前線ということで長雨を知ることの方が多いです。菊月(きくづき)は9月9日の重陽節句(菊の節句)があるからで、菊の花が咲く月であることから「菊咲月(きくさづき)」「菊開月(きくさきづき)」という異名もあるそうです。寝覚月(ねざめづき)という異名はおもしろく、夜が長くなるため、目が覚めることが多くということなる月である、という意味合いで寝覚月とも呼ばれたそうです。私的体験だと、夜涼しくなって月見などして酒がすすみ、しこたま飲んだ後に寝ると夜中に目が覚めます。それもまた風情があって季節感があるように感じます。
他にも異名がたくさんあります。彩月(いろどりづき)は木々の葉が色づくことからきていますが、実際の紅葉はもう少し先です。ロマンチックは印象のせいか歌の題名や作品になっています。「さいげつ」と読んで料亭の名前になったり、「さつき」と呼んで女性のアーティストの名前にも使われています。詠月(えいげつ)とは文字通り歌を詠むにはよい季節です。これも店名などによくみかけます。紅葉月(もみじづき)は少々早い気もしますが、早い木もあり山などでは紅葉は始まるので合っているともいえます。建戌月(けんじゅつづき)または戌月(じゅつづき)というのは馴染みが薄いのですが、古中国では冬至を含む月に北斗七星の取っ手の先が真下(北の方角)を指すため、この月を十二支の最初である「子月(しげつ)」とし、そこから数えて9番目の戌(いぬ)の月という意味です。青女月(せいじょづき)の青女とは前漢時代の「淮南子(えなんじ)」に出てくる霜や雪を降らすと女神のことだそうで、中国大陸では日本より寒さが早いのかもしれません。玄月(げんげつ)というのもありますが、意味不明です。玄という字には黒いという意味の他に、奥深い(玄奥げんおう)とか玄妙という意味もあるので、そういう感じがする月ということかもしれません。この玄妙な道(禅)に入るので玄関ということと関係があるのか、ないのか。

晩秋

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