手話の雑学5

身振りは文化と深い関係があることはわかりましたが、ここで文化と言語と民族や宗教との関係を改めて考えてみます。
先に、言語と文化と民族や人種、そして宗教には関連があることを説明しましたが、すべてが一致しているケースはほとんどありません。あるとしたら、ごく一部の少数民族だけです。日本では、「日本は単一民族、単一国家」と主張する人が多いのですが、単一宗教だと唱える人は稀有でしょう。宗教については、むしろ考えないようにしている人が多いのです。しかし外国の中には、言語と文化と宗教が一致している国が非常に多いのです。イスラエルのような宗教国家では、民族はかなり混じっていて、国家として統一されている原動力は宗教です。
日本への影響の強いアメリカは、アメリカ独自といえる文化といえる部分は日本人が思っているより少なく、民族、宗教も多様化していて、言語状況も複雑です。為政者が常に統一を叫ばなければならないほど、分断と分散が定着しています。ヨーロッパは政治経済的な共同体ですが、言語、文化、民族、宗教はバラバラのままです。よく文化と食の関係が話題になります。日本は和食だけでなく、いわゆるラーメンや洋食なども日本文化を示す食として、外国人から評価されています。わざわざラーメンやギョーザ、とんかつなどを食べにやってくるインバウンドの人がいるくらいです。そして日本政府が伝統的文化として積極的に外国に紹介してきた歌舞伎、相撲、和食よりも、外国人の興味の中心はマンガであり、ゲームであり、日常的な食事ばかりです。ここに自国民が文化として誇りたいものと、外国人がその国の文化として憧れるものの違いがあります。これは、そもそも「クールジャパン」などと、慣れない日本英語でしか発想できない役人の考えるコンセプトと現実が遊離している証拠でもあります。ビジネスでいえば、「売りたいもの」と「売れるもの」が一致していないわけで、需要と供給が一致していません。文化が商品化できるものかどうか、役人は再考すべきでしょう。インバウンドと命名された「呼び込み」という思想を変えるべき事態なのです。
米国は言語統一も不十分で、日本人の考える「アメリカ英語」を話す人はもう15%くらいになっているそうです。実際にアメリカに行くと「英会話が通じない」「何を言ってるのかわからない」ということが日常的に発生します。地域方言だけでなく、民族集団によって、英語の変種がありますが、日本で習うことはまずありません。現地で戸惑うのも当然です。このように言語的統一もできていないだけでなく、当然、背後にある文化や宗教も民族集団によって異なります。「アメリカはキリスト教国」と日本では信じられています。それは間違いとまではいえませんが、キリスト教にもいろいろな宗派がありますし、イスラム教徒やヒンドゥー教徒も多いです。少数ですが仏教徒もいます。いわば言語、文化、宗教が民族と結びついたまま多様化している社会といえます。むしろその多様性こそがアメリカ文化という人もいます。
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