手話の雑学24

これまでの議論から、手話の進化の歴史を見てみると、手話の第1段階は、聾児のいる家庭内での手話、家庭手話で、これを専門用語でhome signsといいます。わざわざ英語で覚える必要はありません。次の第2段階が聾学校内で習得する学校手話school signsです。そして学校手話が同窓生集団により進化したのが、第3段階の地域手話regional signsです。そして、この段階では、手話通訳者との接触があるため、徐々に日本語の影響が強くなります。次の段階は全国的な「標準化」が行われ、マスコミや通訳などの社会現場で使用される「国語的」な共通手話に進化します。それが日本手話Japanese Sign Languageです。この段階になると、日本語の影響はさらに強くなり、文法も変化します。
このような「国語化した手話」national sign languagesは世界ではそれほど多くはなく、早くから聾教育が導入された国に限られます。教育の普及は国によって差が大きく、今でも教育が受けられない子供が多い国がたくさんあります。宗教で教育を制限している国もあります。しかし、聾児は必ず発生するので、どこでも第1段階の家庭手話は生まれます。それが次の学校手話に発達しない国が今も多いのです。その進化具合は指文字という音声言語を視覚的に変換する仕組みの導入の程度でわかります。詳しくはここでは述べませんが、日本指文字は世界の中では独特であり、発展の歴史がわかっています。言い換えると日本では教育が普及しており、聾教育もそれにつれて発展してきました。日本語は独自の文字をもち、それに合わせた指文字があります。独自の文字を持つ国では、それに対応した指文字があります。言い換えると、教育の根本は文字教育であり、指文字は聾教育の歴史の指標ということができます。現在、手話に指文字を利用した語彙が激増していくのは、指文字があるからであり、その指文字は文字教育が前提となっています。文字教育が発達している日本では、指文字語は今後も増大していくことが予想できます。
文字教育にもデメリットがあります。文字は当初は音声を表記することが目的の一部でした。日本語の仮名は日本語音表記のための記号です。当然、外国語の音声には対応していません。そこで昔から、日本人は外国音の表記に悩んできました。結果的に、日本人は英語音表記も不完全なため、日本英語という独自の発音をもつ言語変種を生み出すことになりました。それが聞き取りや発話にも不利な状況を作り出しました。それが劣等感を生むことにもなったのです。
しかし、日本語のわからない外国人からすると、日本語のままよりは日本英語でも「よくわかる」のです。英語の文章理解力もあるので、日本人がなぜ「英語がわからない」というのか、不思議な違和感をもつのも当然です。中には「日本人は英語がわかるくせに、わからないフリをしている」と邪推する人もいます。それが、「日本人は外国人を差別している」「日本人は外国人をバカにしている」と怒る人もでてくる原因です。誤解は困りますが、文化衝突でもあります。
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