正月事納め
物事にはすべて始まりと終わりがあります。正月の飾りも1月7日までで、8日には片付けます。これを正月事納めというのですが、意外に名称は知られていません。仕事始めが4日あるいは5日の会社が多いため、正月三が日で片付けてしまう家も多いかもしれません。正月事始めは本来旧暦の12月8日でしたから、昔の正月は1ヵ月あったわけです。江戸時代頃から正月事始めは鬼宿日である新暦12月13日となり、現代では御用納めが過ぎてから、という家が多いと思います。正月は非日常なので、仕事をしている日が日常になっているわけです。旧来の伝統では、正月事納めで、門松や注連飾りなどを片付けて、どんど焼きなどで燃やして天に返すことで、非日常が終わり、日常が戻ってきたわけです。
西洋のクリスマスも似たような感じで、日本だと12月25日には片付けてしまうクリスマスツリーも飾り始めが12月最初で、新年が始まった後もずっと飾っている家があります。
日本の古来の伝統では正月15日までが正月でした。しかし7日までに短縮されたのは江戸時代で、防災が理由だそうです。明暦の大火は明暦三年(1657)に発生した大火災で、別名「振袖火事」と呼ばれ、江戸の市街地の大半を焼き尽くした火災で、死者は 3~10万人といわれています。幕府は延焼拡大を防ぐための様々な方策を打ち出し、その一つが門松を飾る期間の短縮化がありました。常緑の松とはいえ、門松は半月以上も飾っておくわけですから切り取られた松は正月半ばともなれば、大分枯れて乾燥しています。油分を含んだ松は枯れるととっても燃えやすい木です。こんなものがいつまでも家々の門前に飾られていたら、延焼拡大のもとになってしまうというわけで、明暦の大火から 5年後の寛文二年(1662)に松飾りは七日には片づけるように町触れ(まちぶれ)がでて、これ以後江戸の町では松飾りは正月七日までとなったという由来があります。いつの世でも政治が伝統を壊す傾向があるのです。
地域によっては古くからの伝統のとおり、正月十五日までが松の内というところもあります。田舎だと家が接近していないので、大火事の心配はなかったのでしょう。とはいえ、現在では7日で正月が終わる習慣となり、それがさらに短縮しています。しかし正月納めは松がとれて、家々が生活の場へと戻る大切な日です。天に帰る年神様を忘れないようにする精神は残しておきたいものです。松飾もゴミとして捨てないで、どんど焼きするか、神社などに奉納するのがよいです。しかし肝心の神社が「燃えるゴミとして捨ててください」という張り紙を出す所もあり、こういう神社には天罰が下るかもしれません。
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