学問分野の分類と国民教育
政治と経済が分離できる、と信じている人はもしかすると学問分野の細分化の影響かもしれません。たとえば東京大学では政治学は法学部、経済学は経済学部と分かれています。慶応大学も同じ分類です。早稲田大学は政治経済学部となっています。この3校出身者だけがエリートとはかぎりませんが、世界的企業の経営者の多くはこの3校出身者が多いと想像されます。出身学部が思考に影響があるのが自然です。ちなみにこれらの大学出身者の多くが留学するハーバード大学はじめ多くのアメリカの大学は学部ではなく専攻という形で、日本でいう理系や文系から幅広く選択する方式が取られています。政治学も経済学も専攻であり、専攻には公共政策や工学、統計学、社会科学など、日本では学科として分割される分野の垣根がありません。
日本では文系とか理系という大きなくくりがあり、思考方法や思想に影響を与えていると考えられていますが、その根拠は入学試験にあり、その大本が東京大学です。
では大学の学部を決める基準である文部科学省の大学設置基準はどうなっているかというと、理系とか文系という表現はでてきません。原則として学部名と教育内容は大学が決めてよいことになっています。しかし付帯設備とか基幹教員数など、実効的なところは細かく規定されています。この大学設置基準は昭和31年に定められた省令ですが、ほぼ毎年のように附則が追加されています。つまり教育に対する国の考えが変わっていっているという意味です。省令ということは省庁が決めていることであり、国会による法律ではないので、原則として大臣の名の下に役人が定めるものです。日本はこの省令によって、国民生活のほとんどが規制されています。理系か文系かというのはこの省令でも明確化されておらず、入試制度の頂点にある東大の学部分類が予備校に直接影響し、それが高校の教育にまで影響しているというのが実態です。その結果、国民は高校生の時に、文系か理系かの選択を迫られて、常識化していきます。
国の学問分野の分類はもう1つ文部科学省科学研究費補助金(科研費)の審査区分表にあります。この表もほぼ毎年改定されますが、最近のものは下記にあります。https://www.jsps.go.jp/file/storage/grants/jgrantsinaid/03_keikaku/data/r05/R5_shinsakubunhyo_all.pdf
まず大区分、中区分、小区分に分類され、大区分はAからKまでありますが、いわゆる文系科目は大区分Aのみで、あとはほぼ学問分野ができた順に付け足された感じになっています。たとえば最後の大区分Kは環境科学関係、Jが情報科学関係といった分類で、最初の方にあるBは数学や物理学関係になっています。研究費予算はこれにより配分されていきますから、日本の研究分野は理系偏重ということになります。
研究者数もほぼ比例していると推定できるので、大学教員の数もだいたいはこれに比例しています。ところが学生数の方は文系が半分、3割が理系、残りの2割がその他です。結果として文系私立大学が極端に多くなり、大学生とその結果であるサラリーマンは文系が多いという社会構造になっています。
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