5段階評価の意味
よくアンケート結果の分析として、円グラフや折れ線グラフが使われます。目で見てわかりやすい、ということなのですが、その説明段階でトリックがあることが多いです。円グラフでは2分割だけということはまずなく、5あるいはそれ以上の場合に使われます。たとえば政党支持率です。内閣支持率は折れ線グラフです。この2つのグラフの明快な違いは、円グラフはある時期の分布であり、折れ線グラフは時間的推移です。「傾向」ということばでまとめられがちですが、意味はまったく違います。
まず円グラフですが、アンケートなどでは5段階として「5:はっきりそう思う、4:ややそう思う、3:よくわからない、2:あまりそう思わない、1:そうは思わない」というような心理的な評価基準を、表現を変えて調査します。つまりは「程度問題」です。よくあるマヤカシとして、5を賛成、1を反対、3をどちらでもない、として調査し、4と5を「まとめて」賛成、1と2をまとめて反対とみなして、賛否に「変換」してしまう操作が行われることがあります。世論調査でよくみられる手法ですが、本当は4と5の差、1と2の差に注目してその原因を探らないと、わざわざ5段階にした意味がありません。またこうした調査では3,4,5の真ん中あたりに多くが集まる傾向があります。調査者はそのことを知っていて、あえて「まとめて変換」しています。最初から賛否にすると、真ん中の「どちらでもない」が過半数を占めて結論が出しにくいことが予想されるからです。これは調査というより、結論ありきで誘導するための材料として提示しているにすぎません。選挙や政党支持調査でも、いわゆる浮動票がよく焦点になります。それを「政治的無関心」と結びつける人がいますが、それは間違いで、選挙結果を見て投票率がそれを示しています。投票しなかった人が無関心とみるべきで、アンケートでいえば、回答しなかった人がそれに該当します。無論、回答しない理由は無関心だけではないのですが、回答する人は何らかの関心をもっていると「推定」できます。支持政党のグラフでいえば、回答率が50%で、その70%が支持と答えたという「高支持率」だとしても、集団全体から見れば、35%程度の支持であり、低支持率かもしれません。選挙結果は定員に対する順位だけなので、「国民の負託を受けた」のは事実ですが、「国民全体の支持があった」というのは真実ではありません。ここを誤認している政治家も多いです。マスコミの発表と国民の実感のギャップはこれが原因です。さらにこの円グラフ分析の誤解を折れ線グラフに転用して、支持率の変化として解説するのはトリックでしかないです。変化が強調される効果はありますが、そもそも根底となるデータの信頼度が引くけれれば結果推定の信頼度が低く、変化が見られるといっても微小でしかないかもしれません。
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