呼吸と言語
呼吸は呼気(息を吐く)ことと吸気(息を吸う)ことがセットになっています。深呼吸などをして大きく息を吸うと、酸素を吸入した気分になりますが、実際に酸素が体内に吸収されるのはガス交換と呼ばれる呼気の時です。ガス交換というのは肺の中で二酸化炭素と酸素が交換されることで、ここで吸収された酸素が血液によって全身に運ばれ、二酸化炭素は呼気として排出されるわけです。このガス交換が動物にとって重要です。
音声の発出つまり声を出すのは呼気の時です。例外的にコイサン語では吸気による発声がありますが、ほぼすべての言語において、呼気の時に声を出します。呼気が声帯を通過ことで音が鳴るわけです。言語音声は声帯から出る音だけではなく、鼻を通過する時や歯や舌を使って、音を変化させるのですが、その時も呼気を利用します。逆に考えると、吸気の時は音声が出せません。そして呼吸は定期的に行う必要があります。そのため言語音の発出は定期的になります。それが言語のリズムです。
呼吸は常に一定ではなく、速くなったり遅くなったりします。運動すれば酸素が必要になるので、呼吸は速くなりますし、就寝中はゆっくりになります。この速度の変化がテンポです。
言語音はリズムとテンポだけでなく、音を強くしたり弱くしたりする強弱(ストレス)も用います。ストレスの配置つまりストレス・パタンは言語ごとに決まっていて、単語の特定の位置に置かれたり、文の特定の単語に置かれたりして、認識しやすくするようになっています。
また音を長くしたり短くしたりすることもあります。日本語の長音のイメージです。
音声学では声帯を利用する音を有声音、声帯を利用しない音を無声音といいます。母音はすべて有声音ですが、子音には有声音と無声音があり、日本語ではいわゆる濁音が有声音です。カとガが似たような音に感じるのは子音の作り方が同じで、声帯を利用するかしないかの違いなので、似たような感覚になっていると考えられます。
音声学は発音する側の原理の研究が多いため、調音音声学と呼ばれることもあります。耳(正確には脳)がどのように認識しているか、という研究は始まったばかりです。
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