レトロブーム
今は何度目かのレトロブームだそうです。昭和歌謡とか民具など昭和が「新しい」ということで、若い人に人気なのだそうです。中高年には「昭和が新しい」と言われても違和感だけですが、平成世代には見たことも、聞いたこともないものなので、初めて見る新しい物というのはその通りだと思います。新しい、というのは時代の変遷だけでなく、知らないものに出会うことも含みます。未体験は新しいのです。
幕末から明治の人々にとって、西洋は未知で未体験のものばかりでしたから、すべてが新しかったでしょう。反対に今、日本に来ている外国人にとって、日本文化や日本の風土はすべて未体験で新しいものだと想像できます。実際、昔のヨーロッパの芸術家がジャポニスムということで、浮世絵を始めとする日本の伝統作品に衝撃を受けて新しいものとして採り入れていったという歴史があります。日本では日常的であり、古いから捨ててしまったものが、欧州人には新しかったのです。
ところでレトロというのはどういう意味なのでしょうか。今のレトロブームに江戸時代や平安時代は含まれているのでしょうか。たぶん昭和それも戦後だけに限定されていそうです。昭和は60年あり、3分の1が戦前ですが、戦前の歴史や文化は戦後消されたものが多く、今のレトロにどこまで含まれているか疑問です。今の若者にとって、戦前は歴史であって、明治やそれ以前と同じ範疇に入っていると思われます。
辞書類によると「レトロ(retro)は、retrospective(レトロスペクティブ、回顧)の略語。懐古趣味(かいこしゅみ)のこと。(中略)サブカルチャー的な世界における「古き良きものを懐かしみ愛好する」趣味を指す。(中略)工業製品の場合における「レトロ」とは、現行技術で作られ、見た目だけを古風にデザインしたものを指し、本当に古い年代物の骨董品(アンティーク、ビンテージ)とは区別される。」となっています。(wikipedia)英語として見ると、retro-は接辞で語ではありません。上記でretrospectiveという語が示すように「語の一部」です。英語のunluckyのunだけ取り出して不幸の不の意味の語として使用しているようなものです。借用は普通、語として採用されるのですが、例外的な用法で、当然、外国人には通じません。まして戦後の日本を知らないのは若者と同じなので、昭和レトロといわれても理解できません。
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