屋根の文化
日本でも最近は瓦屋根の家が減りました。「鯉のぼり」という文部省歌の歌詞に「「甍(いらか)の波と雲の波~」というのがありますが、もう甍は死語かもしれません。意味は一般的には屋根瓦のことですが、大棟という切妻屋根のてっぺんを示すこともあります。屋根が続くさまを波に例えて、鯉のぼりが泳ぐ姿を例えています。
海外の家にも屋根がついていて、瓦屋根もありますが、日本の瓦とは異なります。ヨーロッパでは屋根瓦の色が明るい色で統一されていて、街を高台から見ると美しい街並みが印象的です。瓦の色が統一的なのは、製造会社が限定的なのと材料である土が決まっているためで、景観を統一しようという意図はあまりなさそうです。近年は観光の意味から、街の条例でコントロールしているところもあります。日本では瓦屋根が減り、スレートや鉄板が増えて、色もさまざまになってきて、中には南欧風の屋根の家もあって、屋根の街並みはバラバラになってしまいました。
屋根の下には破風(はふ)という三角の部分があって、寺院などの伝統的な建物には飾りのついた立派な破風がついています。これは空気抜きの効果があり、風が吹き込んでもここから抜けるしくみなのですが、現代の家は破風がなく、台風やつむじ風で屋根が吹き飛んでしまう例が増えました。また採光のため、屋根の一部を切り込んで、天窓をつける家もあり、当然ですが、こういうデザインだと雨仕舞がむずかしく、雨漏りになりやすいです。強度も下がるので、風が入るとここから壊れます。最近の住宅建築は見た目のデザイン重視で、機能軽視なのは、建築業者が売ったらおしまい、という風潮があるせいでしょう。昔の大工さんに言わせると、長い期間を掛けて建てた家には愛着があり、建てた後もいろいろ面倒を見てきたそうです。日本の工業技術がメンテナンスに力点を置いているのも、こうした伝統があったからでしょう。プレハブ工法という短期で建築する工法だと愛着よりは、納期と単価が重視されます。プラモデル作りと同じ感覚で住宅を建てる思想は日本の伝統文化に反します。プラモデルの場合、製作者は愛着をもって維持しますが、住宅の場合はそうでないことが問題です。しかも高価な買い物です。五輪や博覧会の建物も最初から壊すことを前提で建てられるなど、無駄の多い文化はどこから来たのでしょう。
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