六日年越し
旧暦1月6日には旧暦1月7日の「七日正月」の前日として、「年越し」の行事が行われていました。七日正月というのもおもしろい習慣で、本来は「人日(じんじつ)の節句」です。人日の節句とは、日本における五節句の一つであり、その中でも特に新年を祝う節句です。人日の節句は、1月6日の「六日年越し」と1月7日の「爪切りの日」という日本の伝統的な行事とも関連があります。六日年越しは、新年の悪霊を追い払い、無病息災を願う行事であり、爪切りの日は、古いものを切り捨て、新しい年を迎える意味合いがあります。この日は新年を迎える準備としての意義が込められており、多くの家庭では七日正月のための準備が始まります。「六日年越し」は地域によって「神年越し」「女の年越し」「馬の年越し」とも呼ばれ、それぞれに特有の風習や意味合いがあります。しかし、共通しているのは、新しい年を迎えるにあたり、家族が集まり、祖先や神々に感謝を捧げるという精神です。「神年越し」と呼ばれる地域では、神々への感謝と新年の祈りを捧げる儀式が重視されます。「女の年越し」という地域では、女性が中心となって正月の準備を行い、家庭の平和や繁栄を願う風習があります。また、「馬の年越し」とされる地域では、馬に関連した行事が行われ、農耕社会における馬の重要性を示しています。「六日年越し」は家族が集まる大切な時となっています。この日は、新年の準備を共に行い、家族の絆を確認し合う機会です。各家庭では、七草粥の準備を通じて子どもたちに伝統的な食文化や年中行事の意味を教える教育的な側面も持ち合わせています。新しい年の計画を立てたり、昨年の出来事を振り返ったりするなど、六日年越しは家族のコミュニケーションを深める大切な時です。
地域のコミュニティにおいても、六日年越しは重要な役割を果たしています。地域の神社や寺院で行われる儀式に参加することで、地域住民は互いの絆を確認し、新年の幸福を共に願います。
地域によっては、この日に特有のイベントやお祭りが開催され、地域の文化や歴史を次世代に伝える機会となっています。これらの活動は地域の伝統を守り、活性化させるために不可欠です。
祝いの準備である前日が重要なのは世界共通ともいえます。日本ではかなり誤解が広がっていますが、クリスマスの前夜祭がクリスマス・イブであり、救世主の降誕を待つ高揚した気分でクリスマスの支度をするのが本来の意味でした。ユダヤ教の重要な祭日である過越祭でも前夜が重要視されています。日本の大晦日も元旦の前日の夜に除夜をしますが、これも同じ意味合いです。
明治時代に新暦に移行した後は、こうした旧暦の行事は都会では次第に忘れられていきましたが、農業との縁が深い地域では、慣習として残っていき、新暦に日付を移して行っている地域もあれば、旧暦のまま行っている地域もあります。習慣というのは家族や地域の中で伝承されていくものであり、地方の人々が都会に移住するようになると次第になくなっていくことになります。習慣がなくなるということは文化もなくなるということであり、残念なことです。
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