言語起源論3 と 比較言語学



言語起源論は哲学的問題もあります。むしろそちらの方が重要なのかもしれません。3月3日は「耳の日」ですが、とくに聴覚について考える日であり、聴覚の重要な機能である言語について考える日でもあります。そこで言語に対する2つの対立的概念について考えてみます。

言語学では昔から現在に至るまで、言語普遍論と言語相対論という対立する思想が支配しています。言語普遍論と名前はいかめしいですが、要するに人間の言語は1つの言語から分かれていった、という説です。それに対して言語相対論というのは、言語は最初から分かれていた、という説です。近代言語学が生まれた当初はヨーロッパの言語だけが研究テーマでしたから、お互いに違う言語といっても民族間では互いに通じる程度の違いしかなく、民族が違ってもかなり類推できそうな語で、文法も似通っているので、いわば親戚同士です。そこで大本の言語は1つだろうということを考えていました。聖書に出てくる「バベルの塔」の伝説を信じていたわけです。そこで、その大本の言語を探す作業が始まりました。そのためには各言語を比較して、元の形を祖語と規定し、推定する比較言語学が盛んになりました。この比較言語学は今でも研究分野になっています。

18世紀末の植民地時代、インドに判事として赴任していたイギリス人のウイリアム・ジョーンズは現地の古代語であるサンスクリットに興味をもち、研究するうち、語根や文法がヨーロッパの言語、とくに古い言語とされるギリシア語やラテン語に似ていることを発見し、共通の祖先があるという結論に達し、それを祖語と呼ぶ説を発表しました。この考えは旧約聖書にある、人類はアダムとイブという1組の男女から始まったという共通祖先という考えとも一致し、人々の関心を集めます。以後、多くの学者がこの説を研究することになりました。この共通の祖語から分かれていった言語のグループをインド・ヨーロッパ語族(印欧語族)と呼んでいます。その範囲をどこまで認めるかについては議論があるのですが、「英語・スペイン語・ロシア語などヨーロッパに由来する多くの言語と、ペルシア語やヒンディー語などの西アジアから中央アジア、南アジアに由来する言語を含む。一部のヨーロッパの言語が世界的に拡散することで、現代においては世界的に用いられている。」(https://ja.wikipedia.org/wiki/インド・ヨーロッパ語族)と解説されているよに、日本人が想像しているよりもはるかに広い範囲が含まれています。現代に用いられている言語としてはアルバニア語、アルメニア語、イタリック語派、インド・イラン語派、ケルト語派、ゲルマン語派、バルト・スラヴ語派、ヘレニック語派の8つの語派にさらに分類されています。北米は英語ですし、南米はスペイン語とポルトガル語が使用されています。アフリカの多くの国では旧宗主国の言語が公用語として使われていることを考えると 世界の国がほとんど含まれています。日本語はここに含まれない独自の言語とされています。

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