教師の話し方


スピーチ

アメリカなどでは、高校以上のカリキュラムに必須科目としてパブリック・スピーキングというのがあり、人前で意見を述べることの重要性が説かれ、実際の技術指導が行われます。公開の場で話をすることは、政治家の演説だけでなく、話すことを仕事としている職業、たとえばアナウンサー、法律家、ビジネスマンのプレゼンテーションなど、幅広く応用の聞く技術です。日本でも国語教育の1つとして教えてもよいはずです。しかし日本では伝統的に国語とは文語のことであり、口語は低いものという扱いが浸透しています。文書になったものは証拠能力が高く、口頭表現の証拠能力は低く評価され、契約も文書でないと認められません。最近でこそ、発言が重視されて、あれこれ批判の対象になったりしますが、それも録音や録画という不揮発性情報化された場合であって、記録媒体の進化の結果です。犯罪の捜査段階で自白が重視されているとはいえ、自白そのものよりも自白を記録した自白調書が優先され、それゆえに冤罪が発生しやすい状況もあります。日本では「水掛け論」として排除される、双方の意見対立も、本来は「言った、言わない」という事実確認よりも、対立している原因を重視すべきものです。「どちらかが嘘を言っている」という感覚は誤りで、双方が嘘を言っていないこともありうるのです。

話し方によって説得力が違ってくることは誰もがわかっています。そのため「話し方」のノウハウを書いた本も多く出版されています。その中で語られているのは「話す内容」で、声の大小などの技術についてはあまり説明がありません。感情により自然に変化すると考えているからでしょう。しかし自然の感情のままに話すのは、職業としてはありえません。まず基本的な技術として、「低い声は力強い」「高い声は注目されやすい」「ゆっくりとした話し方は説得力が増す」「速い話し方は興奮を呼びやすい」という声調の基本原則を知ってほしいです。この組み合わせで「低くゆっくりした話し方」は説得性が高く、催眠術や占い、宗教的な場面で多用されます。その反対である「高い声で速い話し方」は興奮を呼びやすく、商品説明のテレビCMなどで多用されます。有名なヒトラーの演説やケネディの演説はこのタイプです。上手な演説はこれらの組み合わせをさらに複合的に使用します。低くも高くもない声調は中立的な印象を与えますから、引用とか文章的な表現に向いています。パブリック・スピーキングの基本技法としては、まず例文を低い声、中立的な声、高い声で読み上げる練習をします。次に中立的な声調で、ゆっくりした速度、早い速度で読みあげる練習をします。そして、それらの組み合わせを練習していきます。ここで大切なのは、文の内容や意味を考えないことです。本当はアクセントの位置や間を空けるなどの技術もあるのですが、まずは声調の違いの区別をするだけでも、なかなか大変です。本来、早口や遅い話し方などは個性なのですが、それを技法として使い分け、自然にできるようになるにはかなりの訓練期間を要します。「来賓の話」のような退屈にならない技術を学びましょう。

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