投資と投機の共通点
投資investmentと投機speculationは根本的な思想が違っていますが、なぜ混同されるかというと行為がよく似ているからです。どちらも株式を買う点が同じです。会社設立の場合、必ずしも株式を発行する必要はなく、合資会社、合同会社、個人会社など資本投下する方法に選択肢があります。しかし大きな資金を得るには、銀行などから融資を受けるか、株式市場から資金を得るしかありません。そのシステムの差を活用して、最初は個人会社から始めて、大きく育てて、株式を市場で売ることで金持ちとなる、というストーリーを実践しているのが欧米流です。そしてその株式売買を短期で売買して儲けるのが投機ということです。どちらの場合でも株を買うためには証券会社を通じて売買するのが普通です。食品の市場やオークションでも、基本は認証を受けた業者しか参加できず、それが仲買というシステムです。小売店は仲買から仕入れて、消費者は小売店から買うというのが一般的な売買システムですから、個人が直接株式市場に参加することはできません。株の購入が長期目的であろうと短期目的であろうと証券会社を通じて購入するしかない仕組みになっています。その理由は売買利益に税金をかけるためです。その税金を少しだけ免除しようというのがNISAです。NISAはNippon Individual Savings Accountの略語です。直訳すれば「日本個人預金口座」ですが、知っている人はほとんどいないと思います。証券会社の広告でもそういう解説をしていることはなく、「お得」感ばかりを強調しています。ちなみに同じように宣伝されるiDeCoは「個人型確定拠出年金」Individual -type Defined Contribution pension planの略語ですが、英語でも日本語でもわかりにくい概念です。こういう長い漢語や英略語は官僚のお得意技の日本英語で、何かごまかそうという意図が透けて見えることが多いです。それはともかく、株の購入は個人だと証券会社経由でしかできませんが、大きな投資会社だと証券会社を通さず直接売買することがあります。その場合、市場価格とは別の価格が交渉によって決まります。そうして株式の大半を購入して会社経営を行うのがいわゆるM&Aです。Mergers( 合併 )& Acquisitions( 買収 )の略称で日本英語ではなくアメリカ英語です。日本ではなんとなく「乗っ取り」のような印象がありますが、潰れかけた会社を救済することもあり、すべてが悪ではありません。ただしアメリカでは会社株の売買は最初から営利目的であり、個人会社を売って儲けるのも、会社を買って、株価を上げるような実績を作って、売って儲けることは「正しい」商取引です。会社を買う側にもリスクがないわけではないので、乗っ取りとは少し違います。M&Aにも投資目的と投機目的があります。日本では何となく投機目的だけが紹介され「ハゲタカファンド」として嫌われる傾向が強いのは、そもそも企業に対するイメージが日米では差が大きいことが背景にあります。言い換えると日本の株売買のイメージが投機目的に偏っているともいえます。株は換金して初めて損益が確定します。株価も資産として考えるのは会計上だけです。
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