仕事納めと御用納め



12月28日に「仕事納め」の会社も多く、サラリーマンの多い日本では、この日に机の上を整理したり、掃除したりして、新年を迎えるという人も多いと思います。元々官庁が「御用納め」としていたのですが、官民の分離というか、行政機関では今でも御用納めと言う所が多く、民間で御用納めという所はありません。そもそも御用という表現自体、時代劇の中にしか目にすることがなく、奉行所の役人の捕り方が悪人を捕らえる時に持っている提灯に「御用」と書いてあるのを見るくらいです。あるいは「ガマの油売り」で「さあさあ、御用とお急ぎでない方は…」という口上で耳にする程度です。昔は御用聞きという、酒屋などの丁稚が注文取りに家々を回って歩く営業があったのですが、今は丁稚もいなくなり、デリバリーがお届けに来るだけで、注文はインターネットか電話で消費者側から連絡します。少し前まで一般の表現として「御用学者」など政府にへつらう学者とか「御用新聞」のように政府の代弁者のような新聞をそう呼ぶ習慣もありましたが、その前提として、学者や新聞はへつらわないのが正常という意識がありました。学の独立や報道の自由が重要であり、少数派と考えられていたわけです。しかし昨今は反政府的な言動の方が力を増してきて、御用マスコミはほぼ姿を消し、野党にへつらう報道機関が目立つようになり、「報道しない自由」と言われる情報操作をすることが常態化して、マスコミ側が権力をもつようになり、反対にマスコミにへつらう学者や言論人が増えてきました。御用学者が消滅したわけではないのですが、「非御用」が多数派を占めるようになって、「御用」がほぼ死語になったわけです。しかし官尊民卑の意識が消滅するところまでは変化しておらず、官庁の営業日に合わせて年末年始に休業する会社が未だ多数を占めています。

最近は年末年始に土日が来ると調整して長期休暇になることもあり、多少柔軟になってきています。2022年は大晦日が土曜日なので、「通常通り」29日から休業のところが多いと推測されます。こういう「通常通り」のことを「カレンダー通り」とか「暦通り」ということがありますが、実際のカレンダーや暦には休日と書いてありません。休日は法律や政令によって定める「お上」が決めた日で、「御用休み」だからです。御用という表現は消えても未だお上に従う意識とか同調圧力は日本社会において結構浸透しています。別の見方をすると、諸外国では宗教行事に仕事を休むことが多く、休日holidayとなっていて、宗派によって異なるため、「休日の多様性」が常態化していますが、日本は宗教による休日が習慣から消滅してしまいました。また多様的社会を主張する人々の中に宗教的休日の多様性を主張する人を見たことがありません。この非宗教性は日本社会が独特であることの証拠の1つといえます。

ところで、このコラムは休日がありませんので、ぜひ年末年始にもご覧ください。これもIoTのおかげです。

仕事納め
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