送り火


送り火

8月16日は送り火の日です。13日にお迎えしたご先祖が帰られるのを惜しんで火を焚いてお送りするものです。有名なのは京都の大文字焼ですね。火を焚いてお迎えし、火を焚いてお送りするという風習は火が神聖なもの、という思想で、世界共通のようです。電気がなかった時代は明かりといえば蝋燭や篝火(かがりび)、松明(たいまつ)でした。今でも蠟燭や灯明(とうみょう)を灯します。一方で火事の危険もあるので、火の用心には心掛けていました。電気の光は人々の生活を革命的に変えました。

迎え火や送り火の正式な方法は焙烙(ほうろく)の器の上に苧殻(おがら)を重ねて、それに火をつけます。火をつけて放置ではなく、すぐに燃え尽きるので、燃え尽きる前にご先祖様にご挨拶します。焙烙はもうほぼ見かけなくなりましたが、素焼きの平たい小さな鍋のことです。昔は火鉢の上などで、豆や銀杏、胡麻などを煎りました。茶葉も焙烙で炒りたてのもので煎れると香りも立ち風味が増しました。お茶屋さんの前で薫る、あのほうじ茶の香りです。今や急須も面倒になりティーバッグになり、ペットボトルで簡単に飲むようになりましたが、そうなると喫茶というより、喉を潤す飲み物になってしまいました。

苧殻は麻幹とも書き、麻の幹の皮を剥いで乾燥させたものです。亡者は三途の川に行く時、手甲脚絆(てっこうきゃはん)を付け、白い帷子を着て、額には三角の鉢巻き、苧殻の杖を突いて死出の旅立ちをする、と信じられていました。今はそういう死装束(しにしょうぞく)をさせて御棺に入れることもほぼなくなりましたが、少し前まで、そういう姿に葬儀屋さんがしてくれていました。苧殻は意外としっかりしていますが、簡単に折ることができ、すぐに燃え尽きます。

お盆は送り火で終わるのですが、この火の変わりに美しい提灯を飾る家をあります。お盆提灯とか岐阜提灯というのですが、お盆の期間中のみに灯すのが普通です。子供頃、きれいなお盆提灯が楽しくて、涼しげなので、ずっと置いておいてくれればいいのに、と思ったことがあります。ご先祖様がいる間だけということなので、お盆が終わり、精霊流しをすると、盛夏が終わるような気がしていました。

お盆は今では8月15日前後、という習慣が根付いていますが、本来、盂蘭盆会は旧暦7月13日から7月16日までです。2023年の場合、閏月もあって8月28日からです。新暦とは大体1か月遅れになるところから、いつの間にか新暦の1か月遅れということで、月遅れのお盆が定着し、今では、新暦7月15日前後が旧盆ということになってしまいました。そして終戦記念日と重なることもあって、お盆休暇として帰省や観光の時期ということになってしまいました。

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