受信者の意味論2


情報受信

受信者が意味をどのように構築していくか、つまり受信者の意味論を研究するには、まず心理的な現象を物理的な現象に変換しないと、現代科学では研究が困難です。

送信者の場合、発信した「痕跡」が物理的に残ることが多いです。実際、文字による記録だけでなく、録音や録画など電子媒体も増えて、事実として、物理的な解析が可能な状態になっています。そのため言語学や情報科学では、言語解析が進んできました。ところが、受信側の物理的痕跡は残りません。心の中の現象なので、残すとしたら、受信者がその内容を発信し、それを記録するということになります。たとえば誰かの発言を聞いた人がその「理解」した内容を記録して残す作業をします。いわゆる書き取りや記述なのですが、実際の書き取りや記述を比較してみると、メッセージを受け取った個人により差が見られます。それが実情なので、差があって当たり前なのです。つまりどれが正しく受け取った結果ということはなく、どれも正しい受取結果といえます。速記などの例外を除くと、聞き取り記述は聞いた人の主観、時には解釈も加えて文章化されます。それが「聞き取った」という事実です。宗教的な経典だけでなく、多くの文献にはこうした受信者の内容が残されているともいえます。一般には、これらの文献を比較して、共通部分だけを取り出して事実として認める傾向が強いのですが、それはあくまでも共通的な部分であって、受信者の理解すべてではありませんから、本来は非共通な部分も平等に扱うべき資料といえます。

近年はSNSという相互通信機能が発達し、微小な伝達に対して、多くの受信者側の反応が即座に返信されるという新たな局面が展開されています。現在、ビッグデータの研究者はこれらの反応の分析をしていますが、多くは統計的な関心しかないようです。共通部分を取り出して、計数し、傾向を見ることにしか関心が行かないのは、やはりビジネス的な効率を目的とした分析であるからでしょう。文献であっても、ビッグデータであっても非共通部分にも受信の事実があります。問題はそれらを分析する手段が今のところ確立されておらず、最適値という目標設定のため、数量的な偏りに関心をもたざるをえないのかもしれません。しかし、ビッグデータには多くの意義があり、その分析から、受信者の意味理解の構造の解析手法が生まれてくるかもしれません。

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