自文化と異文化


食べ歩き

自分の文化というのは普段意識することはほぼありません。よその文化に接して、初めて気が付きます。異文化に接して驚くことがカルチャー・ショックです。ショックという表現がきつく感じますが、衝撃というほどのことではなく、普通の驚きです。

個人的な体験ですが、昔、アメリカの大学に初めて行った時、自動販売機の中にチョコレートバーとリンゴがあったのに驚きました。そのリンゴが日本のものよりも小さいのも驚きでしたが、学生たちはそのリンゴをかって、歩きながら食べていたことに驚きました。要するに小腹が空いた時、チョコバーやリンゴを食べるので、自販機で売っているわけです。日本の自販機では今でも、チョコバーは少なく、リンゴを売っているものは見かけません。いわゆるスナックとして食べる習慣がないからだと思います。同時に歩きながら、スナックを食べるという行動は日本では「はしたない」行為ですが、欧米では普通の行為です。最近、オーバーツーリズムの問題の1つとして、外国人の食べ歩きに困っている、という報道を見ます。日本以外の国では、歩きながら物を食べることは普通の行為で、食べかすをそこらに捨てるのもよくある行為です。リンゴの食べかすはリスやウサギなどの小動物や虫が餌にしています。そういえば大学の構内にリスやウサギがいるのは普通であり、日本で木に鳥が来るのと同じ感覚のようです。欧米人が果物やお菓子などの食べかすをそこらに捨てるのは、そういう動物への餌くらいに考えているからです。観光地に来た外国人が歩きながら飲食をするのも当たり前なわけです。もっとも観光地の商店も食べやすくするため、わざわざ串に刺して売ったり、小さな袋に入れているわけですから、歩きながら食べることを推進しているようなものなので、急に迷惑というのも勝手といえます。イートインと称する食べる場所を提供している店もありますが、日本では昔はそれが当たり前でした。

時代劇の茶店のように、床几があって、そこで飲食をすることが普通でした。屋台でも座って飲食が当たり前でしたが、いつの間にか欧米風の立ち食いが普通になってきています。その進化系がキッチンカーということになるのでしょうか。

「食べ歩き」という語の意味も違います。本来はあちこちの店に行くという意味ですが、最近は「歩き飲食」と混同される用法も見かけます。

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