正月三が日



明日から仕事始めの人も多いでしょう。これも仕事納め同様に官庁の決まりで、民間がそれに合わせています。官尊民卑は政治体制というより、もう日本の伝統の一部になっていると解釈するのが正しいでしょう。よく考えてみると、官尊民卑と民主主義が矛盾しているように考えるのは、欧米の民主主義が王権との対立であることを意識するからで、日本の官僚組織は王権ではなく民主なので、矛盾がないのかもしれません。

初夢といえば2日の朝にみる夢と思いがちですが、3日朝でもよいのです。1日の夜は酒を飲みすぎて夢もみないことも多いでしょうから、3が日の間に見た夢が初夢ということになります。初夢は「一富士、二鷹、三なすび」といわれていますが、こんな夢見る人がいるのかいつも不思議に思います。それぞれのいわれは有名なので、自分で検索なさってください。それにしてもこういう縁起というのは科学からはほど遠い世界なのですが、なぜかみなさんお好きです。初夢の落語ネタとしては芝濱が有名で、いわゆる夢オチネタの反対で、「また夢になるといけねえ」がサゲです。

3が日の間に、初詣、初笑いなど、初の行事がたくさんあります。何をしても初です。ただ初午(2月)、初戎(10日)、初天神(25日)のように3が日にはできない行事もあります。初戎は関西中心で、関東の酉の市に似た賑わいが見られます。この「えべっさん」も落語のネタが多いです。「おんごく」という落語はお盆が中心の人情話ですが、スタートはえぺっさんの賑わいによる迷子の話から始まります。上方落語だけのネタのようです。初天神は元が上方ですが、現在は東京落語ネタになっており、柳家小三治名人の得意ネタです。詳しくはまたその日になりましたら、お話します。

宮中では天皇が初めて祭祀行事をされるので、元始祭という一般には知られていない行事があります。宮中ではいろいろな行事がありますが、元始祭では陛下が初めて三殿を参拝され、民草の平安をご祈祷になられます。

俳句の世界では、3が日に降る雨を「おさがり(御降)」といい季語になっています。季語に雨に関するものが多いのは日本人の情緒の特異性でしょう。雨に関する語彙が非常に豊富です。それにしても初雨と言わず、わざわざ「おさがり」と婉曲的な用法を用いるとことがなんとも俳諧的な世界観です。一般用語の「おさがり」は上の兄姉から下の弟妹への洋服の使いまわしをいいます。うれしい人は少ないと思いますが、雨のおさがりは何とも優雅な感じを与えます。この話はテレビの天気予報でも聞いたことがないので、外国に比べて比較的情緒的な日本の天気予報も知識不足なのかもしれません。だんだん情報としての価値しかなくなってきているのかもしれません。

初詣

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