受信者の意味論


情報受信

コミュニケーションは送信者と受信者がいて、初めて成立するのが基本原理です。しかしこれまでの研究のほとんどは送信者側の研究でした。伝達の基本ツールである言語の研究でも、構造の研究は発信者の意図から、推定していくものです。意味の研究においても、心の中にある意味がどのように構造化され、言語化されていくか、という研究が今でも主です。Chomskyはideal speaker-hearerという理想状態を想定し、いわゆるNative Speaker(母語話者)には、この理想状態のシステムが内在していると想定した枠組みを設定しました。ここでも明らかなように母語話者の直観を研究対象としているため、受信側の意味構築過程は排除されています。言語学において、母語話者は常識ですが、母語聴者という概念の提唱はありません。しかし現実問題として、受信者が心の中に形成する意味が重要であり、その仕組みの解明が伝達において不可欠なのは確かです。問題はまだその方法が見つからないことにあります。

Interactive Micro Communication (IMC=相互微小伝達)においては、受信者と送信者を想定し、その間のやりとりが重要であると考えています。そして仮想現実Virtual Realityは送信者はヒントを与えるだけであり、受信者が心の中に作り上げていくものです。

送信者には、受信者に仮想現実的な意味を与えようと、いろいろ工夫するのですが、受信者が必ずしも送信者の意図通りになるとはかぎりません。古来、演説を始め、送信側はいろいろな技法を開発し、技法を駆使して、受信者の心の中に仮想現実を作り上げようとしたのですが、なかなか思い通りにいかなかったことははっきりしています。以心伝心とか、テレパシーのように、送信者の意図が受信者にそのまま伝わることが理想なのですが、なかなかそうはいかなかったというのが実際です。この送信側の技術開発は今でも続いていて、伝達媒体(メディア)がいろいろ開発されるたびにいろいろな技術が開発されています。現在、流行中のchatGPTも送信側の技術であり、受信者が完全に支配されるところまでには至らないようです。むしろ疑問や不審が起こっているのが現状でしょう。そもそも受信側がどのようなメカニズムで、どのように心象を作り上げていくのか、という仕組みがわかっていないのですから、当然のことかもしれません。まずは受信側のメカニズムの研究が急がれます。

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