受信者の意味論5 行動観察


ジェスチャー

受信者が意味を心理的にどのように構築していくかを間接的に観察する方法として、一番普及しているのが行動観察です。人間の行動には意識的行動と無意識的行動がありますが、行動のほとんどは習慣化していて、ほぼ無意識に行われています。この無意識的行動は生理的な反射行動とも異なります。反射行動は意識では制御できないのに対し、無意識行動はある程度、制御できます。たとえばくしゃみを止めることはほぼ困難ですが、その時に発する「はっくしょん」などの音声は止めることは可能です。無意識的行動の代表が身振りやジェスチャーですが、その多くには文化的背景があります。喜怒哀楽のような感情表現は人類に普遍的に存在しているといえそうですが、それでもその表現法には民族による違いが見られます。おじぎなどの行動に対する文化的評価も異なります。こうした行動はまったく無意識かというとそうでもなく、わかっていて行動する場合もしばしばあり、いわゆる境界的分野です。ジェスチャーがことばに付随する場合、行動は言語表現と同期する、つまりことばを発すると同時に行動がなされることがわかっています。この時、言語表現と行動が同期していることはほぼ認識されません。ことばは意識しながら発していても、それに付随したジェスチャーについては無意識という状態で同時に発信されています。なぜなのか、という分析もいろいろありますが、人間の進化との関係もあるらしく、興味深い研究テーマです。

絵画や音楽でも心の動きや感情を表現します。これらの芸術活動は行動とは異なります。一番の違いは人間の行動は音声に代表されるように、揮発性情報つまりその場で消えてなくなってしまうものですが、芸術活動は不揮発性情報つまりほぼ永遠に残すことができます。言い換えるとメッセージとしての発信性が強いのです。簡単にいえば、発信の意図が明確であり、受信者の心の中の表現そのままとはいいがたい側面が強くなります。

心理学には「箱庭療法」という有名な治療法があります。通常のカウンセリングは対話で行うのですが、言語を使わず非言語を中心に展開する技法です。この方法は年齢に関係なく、受信者の心の展開が読み取れるとされています。

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