情報価値の低下
現代社会は情報化の時代とよくいわれますが、情報が大量生産されるようになり、相対的に価値が低下しています。情報が十分に吟味されることが少なくなり、使い捨てのような状態になってきています。
たとえば学問の世界でも、今はインターネットで簡単に検索して手に入れることができます。昔は、専門的情報は専門書にしかなく、専門書は売れ行きが少ないため、印刷部数が少なく、結果としてとても高価であり、特別な人しか入手できませんでした。図書館に購入してもらうにも、競争があって、自由に購入してもらうことができませんでした。そして購入後もコピーなどできなかった時代は、借り出して一生懸命書きとったり、まとめたりする作業が必要でした。
今はwikipediaなどのまとめサイトもあり、辞書もネット検索で簡単に見られますが、少し前まで、百科事典やEncyclopediaは大部の本が何冊もあり、そこから情報を引き出すにはかなりの時間がかかりました。それだけに情報は非常に貴重だったのです。論文作成に必要な期間は今も昔もほとんど変わりませんから、昔は1本の論文を書くのに情報検索に膨大な時間がかかり、そこから自分の考えをまとめていくにも時間がかかります。しかしそれだけ考える時間がありました。書く作業も手書き中心なので、書きながら考え、何度も推敲しました。しかし自戒も含めて現状を考えると、コピペが簡単であり、引用は瞬時にできます。そして誤字などは文章ソフトが自動的に修正してくれます。書き直しは実に簡単です。昔の執筆作業を思いだすと、まず手書きで草稿を書き、推敲を重ねて、最後に清書をします。それを印刷に回すと、ゲラができてきて、それに校正を加えて、何度も構成し、最終的に出版という工程です。従って年に何本も論文を書くのは大変です。そもそも掲載する雑誌が限定されていて、採用されるのにも努力が必要でした。そのため埋もれた情報も多かったと思います。一方でガセネタを作るにもそれだけの労力が要るので、相対的には少なかったと推定できます。今は簡単に情報発信ができるので、ガセネタ(フェイクニュースと言い換えても同じことです)が蔓延する結果を生みました。
情報だけでなく、工業製品でも、大量生産することで安価に生産できますが、不良品の確率も増えます。不良製品の選別は重要な過程です。情報世界はまだ発信側がきちんと選別する過程を確立していないように思われます。AIなどで自動選別しているようですが、語彙検索程度で、意味検索や文脈検索はできていないようです。工業製品でもまだ人による選別を最終手段にしている場合が多いのですが、情報産業はそうなっていないので、相対的に価値の低い情報が蔓延する結果を招いています。
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